日本基督伝道会社

日本基督伝道会社（にほんきりすとでんどうがいしゃ）

日本基督伝道会社は、明治時代初期の日本におけるプロテスタント教会形成において重要な役割を果たした機関である。この組織は1877年（明治10年）6月、アメリカン・ボードの支援と協力のもとに設立され、日本人自身の手による福音宣教を推進することを主な目的とした。その活動は、後に日本組合基督教会へと発展していく日本のプロテスタント教会の基礎を築く一助となった。

設立の経緯

日本基督伝道会社の設立は、当時のキリスト教伝道を取り巻く状況と、日本人クリスチャンたちの自立した宣教への熱意に端を発する。1877年6月、京都においてアメリカン・ボードの宣教師たちが年次総会を開催した際、日本の主要なクリスチャン指導者たちもこの会合に招集された。この集まりの目的は、宣教師と日本人信徒が共に日本の福音化について意見を交換し、協力関係を深めることにあった。

会合には、沢山保羅、新島襄、金森通倫、村上俊吉、沢茂吉といった、日本の初期キリスト教界を牽引する指導者たちが参加し、それぞれの立場から伝道に関する力強い奨励を行った。議論された内容は、教会同士の連携や交わりのあり方、新たな信徒を受け入れる際の基準、そして具体的な教会の設立方法など、当時の日本の教会が直面していた喫緊の課題に及んだ。

特に、沢山保羅による奨励は、参加した日本人クリスチャンたちの心に深く響き、彼ら自身の責任においてこの国に福音を宣べ伝えるという強い決意を呼び起こした。この共通の熱意と使命感から、日本人自身の手による伝道事業を組織的に推進するための新たな機関を設立する必要があるとの認識が共有され、その具体的な検討が開始されたのである。

組織の設立集会

この検討を受けて、翌1878年1月、大阪の梅花女学校の校舎を会場として、組織設立に向けた集会が開催された。この集会には、神戸公会、多聞公会、兵庫公会、三田公会、梅本町公会、浪花公会、京都第一公会、京都第二公会、京都第三公会といった、当時関西地方を中心に活動していた九つの主要な公会から選ばれた代表者18名に加え、約200名の信徒が参加した。これは、設立される組織が幅広い教会の支持を得ていることを示すものであった。

集会では活発な議論が行われ、議長には新島襄が選出された。書記としては、村上俊吉と鈴木清が務めた。そして、この集会において、各地へ伝道師を派遣し、組織的な伝道活動を展開するための「伝道会社」を設立することが正式に決定された。伝道事業の責任者として、またその会計を担う委員として、沢山保羅、新島襄、今村謙吉の3名が選出され、新たな組織の運営を任されることになった。

活動とその意義

日本基督伝道会社は、設立の決定を受けて、選出された委員を中心に具体的な活動を開始した。その最大の目的は、限られた地域にとどまらず、日本各地へ積極的に福音を届けることであった。そのため、有能な伝道師を発掘し、育成し、彼らを必要とされる地域へと派遣する事業に力が注がれた。

この組織の意義は、単に伝道活動を推進したという点にとどまらない。それは、日本人クリスチャンたちが、宣教師たちの指導から一歩進んで、自分たちの責任と主導権のもとに日本の福音化に取り組むという、自立の精神を明確に示した最初の大きな試みの一つであったことにある。伝道会社を通じて培われた教会間の連携や協力の経験は、後の日本組合基督教会の形成へと繋がっていく、重要な礎となった。

日本基督伝道会社は、明治初期の困難な状況下で、日本人自身の手による全国的な伝道を志し、その実現のために具体的な組織を設立した点において、日本のプロテスタント教会史に明確な足跡を残したのである。

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