日本基督教団弘前教会教会堂

日本基督教団弘前教会教会堂

日本基督教団弘前教会教会堂は、青森県弘前市に所在する歴史的建造物です。1906年に当時の弘前メソヂスト教会の礼拝堂として建てられました。その建築的価値が高く評価され、1993年に青森県重宝（青森県指定有形文化財）に指定されています。

建築の特徴

この教会堂は、フランスゴシック様式を取り入れた独特のデザインが特徴です。建物両側に配置された二基の尖塔や、外壁に設けられた控え壁、そして細長く上部が尖ったアーチ窓などが印象的です。垂直性を強調するゴシック建築の要素が強い一方で、正面の外壁には各階の間に水平方向を強調する蛇腹装飾が見られるなど、独自の意匠が見られます。また、内部空間の高さを確保するために採用された変則的なトラス構造は、構造的な課題を含みつつも、当時の工夫を示しています。建設から一世紀以上が経過した現在も、礼拝堂として活用されており、その外観は建設時に範としたとされるパリのノートルダム大聖堂を彷彿とさせる風格を備えています。

内部空間

内部は、白漆喰を基調とした簡素かつ厳かな造りとなっています。祭壇周りも装飾を抑えたデザインです。特筆すべきは、ナルティクス（玄関広間）の2階部分に設けられた空間です。ここは日本の教会堂ならではの特徴として、襖で仕切られた畳敷きの三間が配置されています。これらの襖を取り払うことで、礼拝堂を見渡せる約30畳もの広間となり、礼拝や集会時に多くの人々を収容することが可能になるという、実用性を兼ね備えた設計となっています。

教会の歴史

教会の起源は建物よりも古く、1875年に遡ります。横浜から弘前に戻り、東奥義塾の塾長を務めていた本多庸一や、東奥義塾で英語を教えていた宣教師ジョン・イングらが中心となり設立されました。これは東北地方で最も歴史が古い教会の一つであり、全国でも7番目に誕生したプロテスタント教会とされています。

1875年6月には、東奥義塾の旧弘前藩士族である上級生たちに洗礼が授けられました。そして同年10月2日、本多庸一によって弘前公会が設立されます。当初は横浜、東京に次ぐ3番目の長老派系の公会でしたが、特定の教派に偏らない超教派的な立場を採っていました。

しかし、翌1876年にはメソジスト派に編入されることになり、同年10月2日に弘前メソジスト教会として新たな歩みを始めます。この頃には女性の受洗者も現れました。

1877年以降は教会学校の開設や、信徒の集いである四季会の組織化など、活動が活発化します。礼拝堂の敷地も現在の元寺町に定まります。当時の社会で困難な状況にあった町や土手町にも積極的に講義所が開設され、後に著名な牧師となる中田重治とその母もここでキリスト教に出会いました。

1878年には本多庸一が執事に按手され、伝道活動は弘前を超えて黒石や青森にも広がりました。ジョン・イングの後、宣教師デビソンが来ますが短期間で去り、一時的に宣教師不在の時期もありましたが、伝道は続けられ、和徳町にも講義所が設けられました。

最初の教会堂は1880年に建設されましたが、これは木造平屋建ての小規模な和風建築でした。1885年には本多庸一が仙台へ転任し、牧師職は相原英賢に引き継がれます。この頃、カロライン・ライトの支援により、教会内に来徳女学校が設立されています。

1897年には、山鹿元次郎牧師のもとで二代目の教会堂が建てられます。これは弘前の棟梁として知られる堀江佐吉の設計によるゴシック風洋風建築で、正面中央に尖塔を持つデザインでしたが、1904年に残念ながら焼失しました。

現在の教会堂は、この1904年の焼失を経て、1906年に再建された三代目にあたります。設計は櫻庭駒五郎、施工は堀江佐吉の四男である斎藤伊三郎が担当しました。

1900年には、中田久吉牧師時代に教会創立25周年を記念して教会史が編纂され、これを基に後年、50周年、80周年の教会史もまとめられています。

第二次世界大戦中の1941年に、日本のプロテスタント諸教会が合同して日本基督教団が設立された際、弘前メソジスト教会もその一員となり、現在まで日本基督教団弘前教会として活動を続けています。

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