山鹿元次郎

山鹿元次郎

山鹿元次郎は、安政5年12月30日（1859年2月2日）に生まれ、昭和22年（1947年）12月31日に世を去った、日本のメソジスト派の牧師、教育者、そして文筆家です。特に、弘前教会での長年にわたる奉仕でその名を知られています。

彼は津軽藩士・古田家の次男として、江戸の藩邸で生を受けました。後に山鹿素行の系統を引く津軽山鹿家の養子となり、新たに一家を興しています。故郷へ戻った後、東奥義塾に入学し、ジョン・イング宣教師と本多庸一（後の日本メソヂスト教会初代監督）から学びを受けました。明治8年（1875年）10月3日には、イング宣教師から洗礼を授けられ、キリスト教の信仰に入りました。

しかし、彼の人生には波乱が訪れます。養家との関係から新聞社の経営に携わることになりますが、所属記者の筆禍事件が発生。山鹿元次郎は責任者としてその責を引き受け、禁錮7ヶ月の実刑判決を受け刑に服しました。この獄中での経験が彼の人生における大きな転機となります。彼は牢獄の中で聖書に深く触れ、読書を通じてキリスト教伝道者としての生涯を歩むという強い召命を感じたのです。

出獄後、彼は伝道と教育の道を進み始めます。本多庸一の助言を受けて、1882年には弘前教会付属の女学校（現在の弘前学院）の校長に就任し、教育者としてのキャリアをスタートさせました。その後は仙台へ移住し、H・W・シュワーツ宣教師に日本語を教えながら、その地での伝道活動を展開しました。本多庸一が牧会していた青山美以教会（現在の銀座教会）では副牧師として奉仕した経験も持っています。1889年には米沢美以教会へ転任し、そこでは長老および執事の按手礼を授けられています。

彼の働きの中で最も特筆されるのは、弘前教会での貢献です。1893年、彼は主任牧師として初めて弘前教会に着任しました。明治27年（1894年）には、択捉島で伝道活動を行っていたメソジスト伝道師・中田重治（後の日本ホーリネス教会監督）にかつ子伝道師を紹介し、同年8月には二人の結婚式を司式しました。これは日本の近代キリスト教史において重要な役割を担う人物同士の縁を結んだ出来事として知られています。1897年には弘前教会で新会堂の建設を主導し、日曜学校、青年会、婦人会といった教会組織の整備と充実に尽力し、教会の活動基盤を強化しました。

一時、明治30年（1897年）に日本基督教団函館教会へ異動しましたが、1904年には再び弘前教会へ戻ります。以降、大正15年（1926年）に至るまで、長きにわたり同教会の牧会を担い、弘前地域のキリスト教界において中心的な存在となりました。

教育分野への貢献も忘れられません。大正11年（1922年）、彼の母校である東奥義塾が再興される際には、理事長としてその復興に尽力しました。教育に対する情熱もまた、彼の生涯を彩るものでした。

晩年は東京の四男宅に身を寄せ、公的な教会組織から離れた立場での自由な伝道活動を継続しました。

波乱に富んだ明治、大正、そして昭和初期という激動の時代を生きた山鹿元次郎は、獄中での回心を経て生涯をキリスト教伝道に捧げました。牧師として多くの魂を導き、教育者として後進の育成に努め、文筆家として信仰の言葉を綴ったその生涯は、日本の近代キリスト教史において重要な一章を記すものです。特に弘前地域における彼の献身的な働きは、今なお多くの人々に記憶されています。

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