日本外史

日本外史（にほんがいし）

『日本外史』は、江戸時代後期に著された国史の一つであり、頼山陽によって書かれました。この作品は、源平時代から徳川時代に至るまでの武家の盛衰をテーマとし、主に漢文体で記述されています。文政10年（1827年）には、当時の元老中である松平定信に献上され、2年後の文政12年に大坂の秋田屋を中心にした書店により、全22巻が刊行されました。明治以降には、日本語の口語体に翻訳された版も数多く出版されています。

概要

この歴史作品は、前漢の司馬遷が書いた『史記』の形式に倣い、武家歴13氏の興亡を家別及び人物中心に論じています。頼山陽が20代の寛政12年（1800年）に脱藩後に幽閉されている間に執筆を始め、文政9年（1826年）に完成させました。全体は22巻、12冊の構成となっています。

歴史記述は平安時代末期から始まり、源氏や平氏の争いを経て、北条氏、楠氏、新田氏、足利氏、毛利氏、後北条氏、武田氏、上杉氏、織田氏、豊臣氏、そして徳川氏に至るまでの各家の歴史が家系ごとに記されています。特に「徳川氏」については、10代将軍家治の治世までを扱っており、後半では人事に関する記載が多くトピックになっています。また、山陽の死後には、弟子の岡田鴨里が『日本外史補』を著し、その中で山陽の序文や凡例にあたる内容が追加されました。

歴史考証

『日本外史』はその歴史考証において、不正確さや偏見が多いとの批判を受けており、純粋な史書というよりも歴史物語としての性格を色濃く持った作品とされています。しかし、その独特な史観とダイナミックな表現によって、幕末における尊皇攘夷運動に多大な影響を与えたことは明らかです。

さらに、頼山陽の政治経済に関する論考『新策』や、天皇中心の歴史書『日本政記』も彼の重要な著作として挙げられます。歴史的これらの業績は、伊藤博文や近藤勇といった著名人に愛読され、頼山陽の思想や国家観は、幕末から維新にかけての日本に大きな影響を与えました。

構成

本書の徳川氏に関する記述は、次のように整理されています：

• - 巻十五: 徳川氏前記 - 豊臣氏上
• - 巻十六: 徳川氏前記 - 豊臣氏中
• - 巻十七: 徳川氏前記 - 豊臣氏下
• - 巻十八: 徳川氏正記 - 徳川家の出自
• - 巻十九: 徳川氏正記 - 織田政権下の家康
• - 巻二十: 徳川氏正記 - 豊臣政権下の家康
• - 巻二十一: 徳川氏正記 - 関ヶ原から江戸開府
• - 巻二十二: 徳川氏正記 - 秀忠から家治まで

評価

『日本外史』は多くの批評にさらされ、特にその文体や歴史の正確性については多くの専門家から批判を受けています。著名な儒者である帆足万里は、その文体が「俗っぽく、和臭だらけで文法的に間違いが多い」と厳しく評価しました。しかし、実際にはその平明さが一部では評価され、特に漢字に不慣れな武士や役人にとっても読める内容であったとの意見もあります。さらに1875年に清国で国外出版された際、当地の文人からも優れた文章として称賛されました。

このように『日本外史』は単なる歴史書に留まらず、当時の文化や思想に重要な影響を与えた文献であり、学問的にも多くの研究が進められています。特にその後の刊行文献も多岐にわたりますが、各時期や様々な視点からの解釈が加わり、現在でも読み継がれる存在となっています。

もう一度検索