日本敗れず

映画『日本敗れず』の紹介

『日本敗れず』は、1954年に新東宝映画によって制作された日本映画で、2021年にはHDリマスター版が新東宝キネマノスタルジアレーベルからリリースされました。この作品は、終戦時期の日本における政治的な葛藤やクーデター事件を主題にしており、当時の社会情勢を反映した内容となっています。

概要

本作は、日本の終戦をめぐる閣議内の攻防や、陸軍の若手将校たちによるクーデター事件「宮城事件」を描いた初めての長編映画です。戦前にハリウッドで活躍していた国際派俳優の早川雪洲が、主役の陸軍大臣を演じています。監督は同じくハリウッドでキャリアを重ねた阿部豊で、彼は本作のプロデューサーも務めました。映画の内容は、後に再映画化された『日本のいちばん長い日』とは異なり、戦時中の一般市民の苦境に重きを置いています。また、登場人物の役名はすべて仮名であり、事実に基づきながらも創作された側面があります。出演者の中には、制作当時の若手俳優である丹波哲郎や宇津井健が、決起将校の役で登場しています。

あらすじ

昭和20年の夏、東京は連続する大空襲に見舞われ、庶民は厳しい状況に置かれています。そんな中、陸軍省では若手の将校たちが本土決戦の策を練っています。閣議では、総理大臣や外務大臣らが和平の模索を進める中、川浪陸軍大臣は強硬に反撃の必要性を唱え、議論は膠着状態に陥ります。

しかし、ついに御前会議でポツダム宣言の受諾が決定し、玉音放送の録音が行われます。この時、血気にはやる青年将校たちは、天皇陛下の録音した音盤を奪取しようと計画します。彼らは近衛師団長を殺害し、偽の命令を発行して宮城に侵入するという危険な行動に出るのです。

スタッフとキャスト

• - 監督: 阿部豊
• - 製作総指揮: 田辺宗英
• - 製作: 阿部豊
• - 脚本: 館岡謙之助
• - 音楽: 鈴木静一
• - 撮影: 横山実
• - 美術: 進藤誠吾
• - 編集: 後藤敏男

配役

• - 川浪陸軍大臣（モデル: 阿南惟幾） - 早川雪洲
• - 中田東部軍司令官（モデル: 田中静壱） - 藤田進
• - 総理（モデル: 鈴木貫太郎） - 斎藤達雄
• - 南郷外務大臣（モデル: 東郷茂徳） - 山村聡
• - 米田海軍大臣（モデル: 米内光政） - 柳永二郎
• - 新井軍事課長（モデル: 荒尾興功） - 安部徹
• - 竹田中佐（モデル: 竹下正彦） - 沼田曜一
• - など多数のキャストが実在の人物をモデルにし、歴史的背景に絡んだ役を演じています。

映画の評価

『日本敗れず』は、戦争映画としてだけでなく、歴史的事実から派生したフィクションとしても重要視されています。この作品は、当時の日本人が直面していた現実を描き出しており、観客に深い印象を与えるものとなっています。戦闘や政治的陰謀だけでなく、一般市民の視点も取り入れたことで、戦争の悲惨さや終戦時の緊迫した状況がよりリアルに伝わります。

このように、『日本敗れず』は日本映画の中でも特異な立ち位置を持つ作品であり、その内容とテーマは今でも観る者の心に残ります。

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