日本残侠伝

映画『日本残侠伝』の概要

『日本残侠伝』は1969年8月9日に公開された日本映画で、監督をマキノ雅弘が務め、主演には高橋英樹が起用されています。この作品は、日活による任侠活劇としては初の試みで、これまで東映が主導していた毛の作品のスタイルを踏襲したものでした。マキノ監督は東映の「昭和残侠伝シリーズ」などで名を馳せており、日活での新たな挑戦がどのように展開したのかが注目されます。

映画のキャラクターと対立

物語の舞台は、大正時代の浅草。この時代背景の中で、デパートの利権を巡って旧式の一家と新興の一家との間に対立が生まれます。主演の中山秀次郎を演じる高橋英樹は、伝統を重んじる一家の若者を演じ、敵対する新興組織との衝突が描かれています。

また、女郎役として出演した太田雅子は、マキノ監督との出会いを通じて「梶芽衣子」と改名し、女優としてのキャリアを大きく変革させる重要な役割を果たしました。彼女の演じる春代は、物語の中で重要な位置を占めており、観客に強い印象を与えます。その他のキャストには、長門裕之や津川雅彦、南田洋子、山本陽子など多彩な出演者が揃い、物語をさらに深めています。

制作の背景

日活は当時、経営が厳しく、赤字が続いていました。そのため、1969年の初めには撮影所が売却されるなどの困難な状況にありました。しかし、堀雅彦常務製作本部長の方針により、日活は東映の成功に倣い、任侠映画の制作に舵を切りました。このため、マキノ監督が東映から貸し出され、作品が製作されました。

キャスティングの苦労

キャスティングに関しては、日活は女優不足に悩んでいました。当時、他社で活躍する女優が多く、松原智恵子などの人気女優は、テレビドラマで忙しく、映画に出演することができませんでした。この状況から、日活は新たな女優を育てる必要があり、太田雅子を選びました。また、品行方正な外部女優の起用も検討されたもののリスクを考慮し、結局は彼女が選ばれました。

タイトル問題

興味深い点として、本作のタイトルは、東映のヒットした「日本侠客伝」と「昭和残侠伝」を組み合わせたものであり、日活がタイトルを模倣したと言われています。この件に関して、東映の岡田社長から直接クレームがありましたが、マキノ監督は一切動じずに抗戦したと言われています。最終的には、タイトルを変更せずに公開される運びとなりました。

興行成績と影響

見込み以上の興行成績を収め、日活はしばらくの間、好調を維持しました。これにより、会社は次第に経営を安定させ、任侠活劇の道を歩む方向にシフトしました。この映画がもたらした影響は、その後の日活の作品に明らかに色濃く現れています。映画『日本残侠伝』は、業界に新たな風を吹き込み、今でも記憶に残る名作として評価されています。

同時上映

本作は「姐御」との同時上映が行われ、観客に楽しまれました。特に、異なるスタイルの映画が同じ日に楽しめる贅沢な体験が、この時代特有の映画館の魅力を引き立てました。

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