マキノ雅弘

マキノ雅弘について

マキノ雅弘（まきの まさひろ）は、1908年2月29日に京都で生まれた日本の映画監督、脚本家、映画プロデューサー、録音技師、俳優、実業家です。本名は牧野正唯（まきの まさただ）であり、「日本映画の父」と称される牧野省三の息子で、家業に従事する形で映画界に身を投じました。彼は生涯で261本もの劇場映画を監督し、日本映画の黄金期を支えました。特にその中で、沖縄アクターズスクールの設立者である実子マキノ正幸や、映画監督を務めた甥の津川雅彦を抱える著名な芸術一家でもあります。

映画業界でのキャリアの始まり

マキノは幼少期から父の映画製作に影響を受け、日活で子役として活動を開始しましたが、学業の道を選び、京都市立第一商業学校に進学しました。しかし、健康を害し学業を断念。やがて、父のマキノ・プロダクションで助監督としてのキャリアが始まります。18歳で監督デビューを果たし、数々の作品を発表。1928年には『浪人街 第一話 美しき獲物』がキネマ旬報ベストテン第1位に輝くなど、早くからその才能を発揮しました。

トーキー映画へと進化

1929年、日本初のディスク式トーキー映画『戻橋』を監督し、トーキー時代の到来に寄与します。しかし、父の死後、経営危機に直面し、日活に移籍しても厳しい現実に苦しみました。その後、東京映音で録音技術を磨き、トーキー映画の制作に貢献します。1935年には自らの名前を冠したマキノトーキー製作所を設立し、数多くのトーキー映画を手掛けました。

監督としての成功と試練

1937年、マキノ・トーキーは資金難に見舞われ解散し、彼は日活に雇われ監督として迎えられます。阪東妻三郎や片岡千恵蔵らの主演映画を多数ヒットさせ、その名声を揺るぎないものとしました。特に、『鴛鴦歌合戦』などの作品は後に再評価され、彼の代表作の一つとされています。また、彼は「早撮りの名人」としても知られ、特に短期間で完成させた『鴛鴦道中』の28時間という撮影時間はその名を広める要因になりました。

戦後の活躍と映画界への影響

第二次世界大戦後、マキノは苦難の時代を迎えつつも、黒澤明脚本の『殺陣師段平』や「次郎長三国志」シリーズなど多くの名作を生み出しました。高倉健や藤純子を輩出し、彼らをスターに育てたことは、マキノの指導力の証です。1960年代にはテレビドラマにも進出し、彼の作品は多岐にわたりました。1972年には最後の劇場作品を監督し、映画監督としての活動を終えました。

回顧と死去

1977年には自伝を出版し、自らの映画人生を振り返る機会を得ます。1993年には85歳で他界。臨終の際にもサッカーの試合を観戦していたというエピソードは、彼の人生観を象徴するものでしょう。マキノ雅弘は、映画界での革新や数々の作品を残し、今なお多くの人々に語り継がれています。彼の映像作品とその影響力は、現代の日本映画においても色あせることのない遺産といえるでしょう。

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