日本産業対抗野球大会

日本産業対抗野球大会

日本産業対抗野球大会（にほんさんぎょうたいこうやきゅうたいかい）は、「サンベツ」の通称で知られる、かつて存在した社会人野球の全国規模のトーナメント大会です。1951年に始まり、1973年まで毎年秋季に後楽園球場を中心に開催されていました。

この大会は、夏の主要大会である都市対抗野球大会が地域ごとの代表チームによるものであるのに対し、産業対抗野球大会は日本の様々な産業、すなわち特定の業種を代表するチームが集結して優勝を争う、独自の特色を持つ大会として位置づけられていました。

その起源は、戦前・戦後に行われていた鉄道野球大会や、その後に続いた炭鉱、鉄鋼、電機、自動車など、各産業分野ごとの野球大会の隆盛にあります。これらの業種別大会の発展を背景に、「最も強い産業はどこか」という純粋な問いや、日本産業全体のさらなる発展を後押しする目的から、業種の垣根を越えた全国大会開催への機運が高まり、1951年に第1回大会が実現しました。

大会初期には、通常の企業チームに加え、立正佼成会やPL教団といった新宗教団体、さらにはキャバレーを運営する春美野球クラブのような異色のチームも「百貨店・商業部門」として参加するなど、幅広い分野からの出場が見られました。しかし、経済構造の変化に伴い、参加する業種は徐々に減少し、最後の大会となった第23回大会（1973年）では、18業種に集約されていました。

しかしながら、高度経済成長期が終焉に近づくにつれて、業種別対抗という大会の存在意義は薄れていきました。また、新日本製鐵のように複数の野球部を持つ企業が合同チーム「全○○」として参加したり、都市対抗野球と同様に補強選手制度が導入されていたりしたため、単独チーム同士が真の力を競い合う大会を求める声が高まりました。これらの要因が複合的に作用し、大会は1973年をもってその歴史に幕を閉じ、翌1974年からは関西を拠点とする社会人野球日本選手権大会へと引き継がれることとなりました。これは産業対抗野球大会の「発展的解消」と捉えられています。

日本プロ野球のドラフト制度が始まる1965年以前、都市対抗野球がその年の野球シーズンを締めくくる大会と見なされていたため、産業対抗野球大会は新チーム体制で臨む最初の重要な全国大会としての側面も持っていました。

大会の優勝チームに授与される旗は、都市対抗の黒獅子旗にならい、黒い鷲が刺繍された黒鷲旗と呼ばれていました。

大会は概ね後楽園球場で行われましたが、初期には武蔵野グリーンパーク野球場や川崎球場が会場となったこともあります。第1回大会には22業種から代表チームが参加しましたが、その後の社会・経済情勢の変化に合わせて参加業種は変動しました。例えば、第2回で百貨店と商業が統合・自動車が分離、第5回で専売が官業公社から分離、第6回でゴム皮革が化学工業に吸収・映画演劇が消滅するなど、様々な変遷を経て部門構成は変化しました。

この大会には出場したものの、都市対抗野球大会本大会には届かなかったチームも多く存在します。明治座、馬渕建設、キリンビール、明電舎、北炭夕張、石川島播磨などがその例として挙げられます。

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