日本秘湯を守る会

日本秘湯を守る会とは

「日本秘湯を守る会」は、日本の秘境や山奥にひっそりと佇む温泉宿が集まった団体です。これらの宿は、かつて湯治場として利用されていた場所や、登山客の拠点となるような僻地に位置しています。

会の理念は、日本の古き良き温泉文化、美しい原風景、豊かな自然を後世に伝えていくことです。そのため、会員となっている温泉旅館は、小規模で、自然に囲まれた環境にあります。

設立の背景と目的

1975年4月、朝日旅行（現：株式会社朝日旅行）の創業者である岩木一二三氏の発案により設立されました。当時、大手旅行会社では扱わないような、バスも通らない辺境の温泉宿が集まり、その魅力を広く発信し、地域文化を伝えていくことを目的としています。

さらに、地域社会との共生を重視し、過疎化が進む地域の活性化や、自然環境の保護にも取り組んでいます。会員同士が協力し、日本の原風景や自然、多様な生物を育む山河を守り、未来へ繋ぐ人材を育成することを目標としています。

会の活動

発足当初33軒だった会員は、現在では全国各地に広がっています。会員宿を紹介するガイドブック「日本の秘湯」は、1977年に創刊され、長年にわたり多くの人に愛されています。

また、1983年からは、会員宿を巡るスタンプ帳事業を開始しました。これは、会員宿に宿泊した際にスタンプを押してもらい、一定数集めると、再び無料で宿泊できるというものです。このスタンプ帳は、旅の思い出づくりになるとともに、会員宿への集客にもつながっています。

2017年からは、るるぶトラベルとの業務提携により、公式サイトだけでなく、より多くの人が会員宿の予約をできるようになりました。

長らく朝日旅行の提携団体でしたが、2020年3月31日の朝日旅行の廃業に伴い、現在は独立した法人として活動しています。

会員宿の特徴

会員宿は、秘湯という名にふさわしく、人里離れた場所にあります。数時間の登山をしなければたどり着けない一軒宿や、自家発電のみで運営されている宿も珍しくありません。

しかし、交通の便が悪くても、秘湯を守る会の理念に共感し、自然環境や温泉を大切にしている宿ばかりです。そのため、宿同士の交流も深く、宿泊客に別の会員宿を勧めることもあります。

会員宿は、民芸調や純和風旅館、山小屋風など、その外観も様々です。いずれも、秘湯のイメージに合う、趣のある建物が多いのが特徴です。また、つり橋を渡ってしか辿り着けない宿や、冬季は閉鎖されてしまう山の温泉など、個性豊かな宿も少なくありません。

会員資格と変化

会員になるには、入会審査を通過する必要があります。単に秘境にあるというだけでなく、会の理念に合致しているか、自然や温泉を大切にしているかなど、様々な視点から総合的に判断されます。

会員宿の中には、設立当初から時を経て、交通の便がよくなったり、周辺の観光開発が進んだりして、秘湯のイメージが薄れてしまった場所もあります。しかし、そのような場合でも、会員資格がすぐに失われるわけではありません。過去の歴史や文化を継承し、温泉文化を守るという使命を担っているからです。

会員宿の玄関先には、「日本秘湯を守る会」の提灯が掲げられていることが多く、旅番組などでもよく見られます。この提灯を目印に、宿泊先を決める人も少なくありません。

現代における役割

「日本秘湯を守る会」は、単に温泉宿を紹介するだけでなく、日本の美しい自然や文化を守り、後世に伝えていくという大きな役割を担っています。会員宿は、地域社会とのつながりを大切にし、過疎化が進む地域の活性化にも貢献しています。

これらの宿を訪れる人々は、自然の恵みや温泉の癒しを体験するだけでなく、日本の原風景や文化に触れ、心の安らぎを得ることができます。

「日本秘湯を守る会」は、これからも、日本の大切な宝である秘湯を守り続け、その魅力を発信していくでしょう。

もう一度検索