日本統治時代の台湾の高等教育機関

日本統治時代の台湾における高等教育機関

1895年から1945年までの日本統治時代、台湾には様々な高等教育機関が設立されました。これらの学術機関は、戦後に中華民国統治下へ移行した後も多くが継承され、今日の台湾における高等教育システムの基盤を形成しています。本稿では、日本統治時代を「戦前」、中華民国統治時代以降を「戦後」と呼び、主要な高等教育機関の歴史を辿ります。

帝国大学

戦前における台湾の高等教育の最高峰は、1928年に設立された台北帝国大学です。当初、文政学部と理農学部が設置され、その後医学部、熱帯医学研究所、工学部などが次々と加えられ拡充が進みました。1943年には理農学部が理学部と農学部に分離されるなど、多様な学問分野が網羅されていきました。

戦後、1945年11月に中華民国に接収され、国立台湾大学と改称されました。文政学部は文学院と法学院に分かれるなど再編が行われ、附属研究所や予科なども名称変更や廃止を経て整理されました。現在の国立台湾大学は、台湾を代表する総合大学として発展しています。

旧制高等学校

1922年に台湾総督府高等学校として開校し、1927年に台湾総督府台北高等学校と改称されました。尋常科と高等科が設けられ、主に旧制大学への進学予備教育を担いました。

戦後、1945年10月に中華民国に接収され、台湾省立台北高級中学となりましたが、1946年に設立された台湾省立師範学院（後の国立台湾師範大学）に併設される形となりました。台北高級中学としての学生募集は1949年に停止され、1952年の最後の卒業式をもって廃校となりました。一方、師範学院は1955年に大学に昇格し、台湾省立師範大学、さらに1967年に国立台湾師範大学となり、教員養成に加え、人文科学、自然科学、教育学、芸術、科技、運動・レジャーなど多様な分野を擁する総合大学として発展しています。

工業専門学校

1931年に台南高等工業学校として設立され、機械、電気、応用化学の学科が設置されました。その後、電気化学科が増設され、1944年には台南工業専門学校と改称されるとともに、土木科と建築科も加わりました。

戦後、1946年3月に中華民国に接収され、台湾省立台南工業専科学校となりました。同年10月には工科大学である台湾省立工学院に昇格し、1956年には総合大学の台湾省立成功大学へと発展しました。当初は工学部に加え商学部と文理学部がありましたが、文理学部は後に文学院と理学院に分離されました。1971年には国立へ移管され、国立成功大学と改称されました。現在では、工学、商学、文学、理学に加え、医学、社会科学、電機情報、計画設計、生物科学など多岐にわたる学部（学院）を持つ、台湾南部の主要大学となっています。

商業専門学校

1919年、台湾総督府高等商業学校と台湾総督府商業専門学校が設立されました。前者は台湾総督府台北高等商業学校に、後者は台湾総督府台南高等商業学校となりましたが、台南校は後に台北校の分校となり、1930年には廃止されました。台北高等商業学校は1944年に台北経済専門学校と改称されました。

戦後、1945年に中華民国に接収され、台湾省立台北商業専科学校となりました。1946年には商科大学である台湾省立法商学院に昇格しましたが、1947年1月には台湾大学法学院商学系として統合されました。この商学系は、後に台湾大学法学院から分離・独立し、1987年に台湾大学管理学院へと昇格・改組され、発展を遂げています。

医学専門学校

台湾における医学教育の起源は古く、1899年設立の台湾総督府医学校に遡ります。専門部や熱帯医学の専攻科・研究科が設けられ、1919年に台湾総督府医学専門学校となりました。1927年には台湾総督府台北医学専門学校と改称され、1936年には台北帝国大学附属医学専門部として移管・統合されました。

戦後、1945年に一旦廃止されましたが、1946年3月に台湾大学医学専修科として再設置されました。しかし、この専修科は1950年に廃止されました。これらの医学教育機関の流れは、台北帝国大学に医学部が設置されたこと、そして戦後の台湾大学医学部へと繋がっていく基盤となりました。

農林専門学校

1919年に台湾総督府農林専門学校として設立され、農業科と林業科が置かれました。その後、台湾総督府高等農林学校、台湾総督府台北高等農林学校と改称され、1928年に台北帝国大学附属農林専門部となりました。農芸化学科の増設なども行われましたが、1942年に台北帝国大学から分離し、台湾総督府台中高等農林学校（後に台中農林専門学校）として台中へ移転しました。

戦後、1945年12月に中華民国に接収され、台湾省立台中農業専科学校となりました。演習林も名称変更されました。1946年9月には農科大学の台湾省立農学院に昇格し、1961年には総合大学の台湾省立中興大学へと発展しました。当初は理工学院と農学院が置かれましたが、後に文学院、生命科学学院、獣医学院、社会科学・管理学院などが加わり、1971年に国立へ移管され国立中興大学となりました。農学を中心に多様な分野を擁する中部地域の主要大学となっています。

女子高等学院・女子専門学校

女子の高等教育機関としては、1931年に私立台北女子高等学院が設立されましたが、1944年に廃校となりました。その校舎を利用して、1944年に私立台北女子専門学校が設立されましたが、こちらも戦後間もない1946年に廃止され、校舎は小学校に転用されました。これらの女子専門教育機関は短命に終わりました。

まとめ

日本統治時代に創設されたこれらの高等教育機関は、戦後、名称や組織の改変を経ながらもその学術的蓄積や基盤が継承され、現在の国立台湾大学、国立台湾師範大学、国立成功大学、国立中興大学といった台湾を代表する大学群へと発展しました。これらの教育機関の歴史は、台湾における近現代高等教育の発展史において重要な一章をなしています。

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