日本航空ニューデリー墜落事故

日本航空ニューデリー墜落事故

1972年6月14日に発生した日本航空ニューデリー墜落事故は、日本航空初の旅客死亡事故であり、航空業界に多大な衝撃を与えた。日本航空471便のDC-8-53型機は、羽田空港からロンドンに向かう途中、ニューデリーのパラム国際空港への着陸進入中に墜落した。事故の結果、乗員乗客89名中86名が亡くなり、地上の工事作業員4名も犠牲となった。

事故の概要

事故当日、471便は南回りヨーロッパ線を運行していた。午後8時16分、ニューデリーの空港に向かう途中、機体は空港から24キロメートル手前のヤムナー川河畔に墜落することとなった。乗客と乗員のほぼ全員が命を落とし、犠牲者の中には著名人も含まれていた。この事故の発生は、航空会社及び国際的な航空安全に対する懸念を引き起こした。

事故発生の経緯

事故機は、通常の着陸経路を維持していると思われたが、フライトレコーダーの記録は異常な高度降下を示していた。機体は2100フィートまで降下しても水平飛行に移らず、降下を続けていた。ボイスレコーダーからの情報によると、パイロットたちは墜落直前まで異常に気付いておらず、副操縦士は護岸工事の照明を滑走路のものと誤認していた。

さらに、着陸に必要な高度の確認を怠り、デシジョン・ハイトを超えても誰もそれを指摘しなかった。墜落の数秒前、機長は初めて滑走路が無いことに気が付き、急いで推力を上げようとしたが、時すでに遅く、機体は水際に接地した後、護岸工事中の土手に激突した。

事故原因の分析

調査によると、事故の主な原因は、操縦士が異常降下に気付かなかったことに起因する。規定の手順を守らず、計器表示の確認が不足していたこと、機長と副操縦士の経験不足などが指摘されている。また、前夜の飲酒や徹夜の麻雀が、乗員の判断力を鈍らせた可能性もある。事故後、日本航空は他の航空会社からもILS誘導電波の異常が報告されたことで、技術的な問題も疑われることとなった。

犠牲者とその影響

事故による犠牲者には、インドのハンセン病治療に貢献した宮崎松記や著名なブラジル人女優が含まれていた。また、落語家の実妹も客室乗務員として搭乗しており、衝撃の影響を受けた。日本航空は日本人犠牲者に対して120万円の見舞金を支給したが、外国人の遺族への補償が不十分であるとの批判もあった。インドにおける事故調査では、国際的な調査が行われ、透明性のある審判が続けられた。

事故後の展開

この事故は日本航空が相次いで事故を起こしていた時期に発生した。日本航空は、多数の事故により業績にも悪影響が出て、社会からの信頼にも傷がついてしまった。特に1972年には、羽田空港暴走事故や他の墜落事故も相次いで発生しており、航空業界全体が厳しい目にさらされた。

調査や報道からの情報を通じて、事故の様々な要因が浮き彫りとなった中で、国際的な航空機事故調査においては多くの教訓が得られ、今後の航空安全向上に向けた取り組みが継続されることとなった。

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