日本航空ボンベイ空港誤認着陸事故

日本航空ボンベイ空港誤認着陸事故

1972年9月24日に発生した日本航空ボンベイ空港誤認着陸事故は、航空業界における重要な事件の一つです。この事故は、日本航空472便がインド・ボンベイのジュフ空港に誤って着陸したもので、多くの教訓を今に伝えています。

事故の概要

この事故は、ロンドンから南回りで東京へ向かっていた日本航空472便が関与しました。フランクフルト、ローマ、ベイルート、テヘランを経由し、ボンベイに寄港した後はバンコク、香港を経て羽田空港に向かう予定でした。使用されていた機体はDC-8-53（機体記号JA8013）で、20分遅れてロンドンを出発しましたが、テヘランを離陸する頃には遅れが1時間20分に達していました。

その日の早朝、ボンベイに到着した472便は計器着陸を試みましたが、空港管制官から「滑走路は見えますか？」と問われました。機長は「見えます」と答え、その後「有視界進入せよ」の指示を受け取ります。このため、472便はボンベイのサンタクルズ国際空港の滑走路を上空で通過し、360度旋回を始めました。しかし、誤って3.7km離れた小型機専用のジュフ空港に着陸してしまいました。

ジュフ空港の滑走路は1143メートルで、大型機の着陸には適していませんでした。472便の機長は誤着陸に気づき、最大限の緊急操作を行いましたが、結局はオーバーランが起こり、機体は空港の敷地外に飛び出しました。左翼エンジンが2機とも離脱し、前輪と主輪が破損、機首は地面にめり込み、火災も発生しましたが、消火器によってすぐに消し止められ大きな被害には至りませんでした。

この事故では、乗員14名、乗客108名のうち、11名が負傷しました。事故機は、その後現地で解体処分されることとなりました。

事故の原因

1973年9月、インド政府は事故調査の結果を発表しました。視界が悪い状況の中で不適切な手順が強調され、サンタクルズ空港をジュフ空港と誤認して着陸したことが主な原因とされました。また、管制官の手順についても、問題が指摘されました。さらに、ジュフ空港へ着陸するこのような事故は、1942年のサンタクルズ空港の開港以来、既に発生していたことも確認されましたが、日本航空による事故が負傷者を出した唯一の例となっています。

事故発生後の記者会見では、472便の機長が朝日を背にして360度旋回する中で、朝もやと日光の反射によって滑走路を見失い、目に入ったジュフ空港をサンタクルズ空港と誤認したと説明されました。また、ジュフ空港へのコースには計器着陸装置が設置されていないため、パイロットが誤認しやすい状況が強調されました。日本航空がボンベイに就航を始めたのが1972年7月であったため、パイロットたちは近隣空港の存在についての特別な指導を受けていませんでした。

事故の影響と教訓

この事故は日本航空にとって深刻な教訓となり、経営や安全管理における様々な問題が指摘されました。柳田邦男は、「ミスが連続して起こるような会社の体質」として経営問題を指摘しました。その後の調査や対策によって、航空業界における安全基準や手順が見直され、事故を未然に防ぐための取り組みが強化されました。

国内では空港を誤認して旅客機が着陸する事故は発生していませんが、過去には羽田空港での滑走路への誤着陸事件など、誤認につながるミスはいくつか報告されています。特に航空自衛隊基地がある新千歳空港では、時折誤認が発生することがあるものの、滑走路の長さが問題ないことが多く、無事に着陸が行われています。

このような事故を教訓に、今後も航空業界の安全性向上に努めることが必要です。

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