計器着陸装置

計器着陸装置（ILS）

計器着陸装置（Instrument Landing System、ILS）は、航空機が着陸進入を行う際に、視界が悪化する状況でも安全に滑走路に誘導するためのシステムです。空港や飛行場の地上施設から発射される指向性の誘導電波を使用して、航空機に必要な情報を提供します。日本の電波法においては、ILSは航空機に対し、着陸降下直前や降下中に水平・垂直の誘導を行い、着陸基準点までの距離を示す無線航行方式として定義されています。

ILSの基本構成

ILSの主な構成要素には、以下のものがあります。

• - ローカライザ（LOC）: 着陸進入の横位置を示す計器で、150Hzと90Hzの電波を用いて航空機の進入方向を判断します。
• - グライドパス（GP）: 降下経路の縦位置を示し、低周波信号を使って航空機の降下経路を設定します。
• - マーカービーコン（MB）: 滑走路までの距離を示すためのもので、航空機が通過する際に距離情報を伝達します。

これらの設備はそれぞれ異なる周波数を使用し、空港ごとに特定の周波数に合わせて調整されます。航空機はこれらの信号を受信し、進入経路を正確に把握します。

ILSの原理と機能

ローカライザとグライドパスは、共に航空機に正確な進入経路情報を提供する重要な役割を果たします。ローカライザは特定の周波数で変調された電波を発射し、航空機のアンテナで受信された信号の強度を比較することで、左右のずれを特定します。グライドパスも同様の原理で、上下のずれを判断します。

また、マーカービーコンやT-DME（ターミナル-DME）も使用され、これにより航空機は接地点に対する距離を知ることができます。特に、マーカービーコンはインナーマーカー、ミドルマーカー、アウターマーカーの三種類があり、それぞれ異なる周波数で変調され、航空機の進入状況を知らせます。

カテゴリー別の精度

ILSは、その精度に基づいて5つのカテゴリーに分類されています。カテゴリーが高くなるほど、着陸決心高（Decision Height）が低くなり、悪天候や視界不良時の着陸が可能になります。ただし、これにはパイロットと航空機がそのカテゴリーに対応した条件を満たしている必要があります。特に、CAT II以上では航空会社が国土交通大臣からの特別な許可を得る必要があり、空港でも低視程時の運用体制を整える必要があります。

たとえばCAT IIIの中でも最も精度が高いCAT IIIcは、航空機やパイロットが適切な条件を満たせば、視界が全く無くても安全に自動着陸が可能です。ただし、これを運用するためには特殊な設備が必要であり、実施に向けた課題も多いのが現状です。

日本国内におけるILSの運用

日本国内の1500m以上の滑走路を持つジェット化空港では、ほとんどの場合フルILSが設置されていますが、十分な条件が整わない場合もあります。例えば、富山空港や南紀白浜空港などは、ローカライザとT-DMEのみが備わっている一方で、グライドパスが未設置です。また、日本で唯一の民間パイロット訓練空港である下地島空港は、ILSが両側に設置されています。これは、大規模な空港で見られる例の中でも珍しいケースです。

特に、成田国際[[空港]]や東京国際[[空港]]などでは、精度の高いILSが設置され、視界不良時の着陸を支援しています。これにより、航空会社は新しい路線の開拓やダイバート時のコスト削減を実現することができています。一方で、ILSの運用によってパイロットには新たな訓練が必要となり、機器の正しい使用が求められます。

まとめ

ILSは、悪天候時にも航空機の安全な着陸を支援するための重要なシステムです。その基本原理は、地上からの電波による進入誘導であり、航空機が求める情報を提供します。日本においても、適切な施設が設置されることによって、航行の安全性が向上しています。これからも技術の進歩とともに、より高精度で安全な着陸支援システムの発展が期待されます。

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