柳田邦男

柳田邦男の生涯と業績

柳田邦男（やなぎだ くにお）は1936年6月9日に栃木県鹿沼町で生まれた日本のノンフィクション作家であり、「クライシス・マネジメント」や「終末医療」といったテーマを取り上げた著作で知られています。彼の作品は、航空機事故、医療事故、自然災害、戦争に至るまで、多岐にわたります。

柳田は栃木県立鹿沼高等学校を卒業後、1960年に東京大学経済学部を完成し、同年にNHKに入局しました。彼は広島放送局での勤務を経て、東京に戻り社会部に配属されました。その後、1966年には全日空羽田沖墜落事故をはじめとするいくつかの航空事故を取材し、1971年にはそれらの経験を基にしたルポルタージュ『マッハの恐怖』を発表。これがきっかけで彼は第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。

1974年、柳田はNHKを退職し、ノンフィクション作家としての道を歩み始めました。彼は事故や災害の分析を行い、その知見を元に著書を数多く作成。中でも『零戦燃ゆ』といった戦史ノンフィクションや、精神に関する問題を扱った著作が評価されています。

特に1994年に発表した「犠牲（サクリファイス）: わが息子・脳死の11日」では、自身の次男を看取った経験を述べており、脳死問題における新たな視点を提供しました。この作品は文藝春秋読者賞と菊池寛賞を受賞。以降も彼の著作は多くの賞に輝き、2005年には日本航空の「安全アドバイザリーグループ」の座長としても活動しました。

柳田はまた、若者文化とネット社会についても強い意見を持ち、ゲームやインターネットがもたらす影響について否定的な見解を述べています。例えば、彼は子どもたちが「ゲーム脳」に侵されているという仮説を提唱し、リアルと仮想の境界が曖昧になることを警告しています。しかし、これに対する科学的根拠には疑問もあり、柳田自身が書籍『壊れる日本人』の中でその意見を展開しています。

受賞歴においても、柳田は功績を数多くしており、特に報道記者としての業績が評価され、ボーン・上田記念国際記者賞や日本放送協会放送文化賞を受賞しています。彼の著作は多岐に渡り、航空事故に関連するものから、社会問題や若者文化に対する考察まで含まれています。中でも『事実の考え方』や『脳治療革命の朝』などが広く知られています。

柳田は、吉川英治文化賞や司馬遼太郎賞の選考委員を務めるなど、文化界でも重要な役割を果たしつづけています。また、2011年には政府の東京電力福島原子力発電所事故調査・検証委員会のメンバーに選出されるなど、公的な場でも意見を発信してきました。

彼の家族にも著名な人物が多く、妻は絵本作家の伊勢英子、娘はカメラマンの石井麻木です。柳田の業績は日本のノンフィクション界に大きな影響を与え、その思想は多くの人々に深い洞察をもたらしています。

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