日本航空機駿河湾上空ニアミス事故

日本航空機駿河湾上空ニアミス事故の詳細

事件の概要

2001年1月31日、静岡県の駿河湾上空で、日本航空の2機が異常接近する事故が発生しました。午後3時55分、羽田空港から那覇空港に向かっていた日本航空907便のボーイング747-400D（JA8904）と、韓国から成田国際空港に向かっていた日本航空958便のDC-10-40（JA8546）が接近しました。最接近時の距離は約135メートル、高度差は約40メートルであり、両機は回避操作を行いましたが907便では急降下が起こり、乗客427名のうち9名が重傷、91名が軽傷を負いました。958便に乗務していた250名には負傷者はいませんでした。

この事故は物理的な衝突には至らなかったものの、航空機同士の接近は極めて危険な状況であり、もし衝突していれば大惨事になっていた可能性がありました。国土交通省はこの事件を航空事故と認定し、徹底的な調査が行われました。

事故発生の経過

事故の背景には、多くの要因が絡んでいましたが、主な原因は航空管制官による不適切な指示にありました。事故当時、東京航空交通管制部では、訓練中の管制官がレーダー画面を見ていたものの、907便と958便の接近を見落としていました。

午後3時54分15秒、レーダーには両機の異常接近を示す警告が表示されましたが、その後の指示が誤って行われることとなりました。907便に対して降下を指示すべきタイミングで、誤った指示が出された結果、907便は指示に従って降下を開始しました。この時、TCAS（空中衝突防止装置）が作動し、907便には「上昇」の指示が自動的に出ましたが、これに従わず降下を続けました。

両機は接近する中で、最終的には907便が958便の下側を通過しました。この瞬間を目撃した958便の乗員は、907便の姿を確認したと証言しています。

被害状況

907便の乗客411人、乗員16人の中で、重傷を負った者が9人、軽傷者が91人に上りました。重傷者は捻挫や骨折等がありましたが、958便には負傷者は出ませんでした。907便の客室では、シートベルト着用サインが消灯されていたことも影響し、急降下により多くの乗客が負傷しました。

また、2機とも機体外部に大きな損傷はなかったものの、907便の客室においては、アームレストや空調用ダクトなどが損傷したほか、ギャレーカートも影響を受けました。

事故の原因

国土交通省の調査報告書によると、複数の要因が本事故を引き起こしました。主な原因は、航空管制官の不適切な指示にあり、特に誤った便名の使用が大きな要因であると認識されました。また、当時の航空法にはTCASと管制指示が対立した場合の優先順位についての明確な規定がなく、管制官がTCASの指示内容を知る手段がなかったことも問題でした。

その結果、907便は不適切な降下を続け、事態を悪化させる要因となりました。もし管制官が正しい指示を出していれば、907便と958便の接近を回避できた可能性が高いとされています。

事故後の対応

事故後、日本航空は運航規定を見直し、TCASの作動状況を管制側のレーダー画面で確認できるシステムの導入を進め、管制官の教育と訓練を強化しました。しかし、同様の事故を防ぐための調査要請に対して国際民間航空機関（ICAO）の動きは遅れ、航空業界全体としては十分な教訓を得られなかったことが指摘されています。

刑事裁判の経過

国土交通省の航空管制官二名が刑事責任を問われ、業務上過失傷害罪で起訴されました。裁判の過程で、誤った指示による業務上の過失の有無や、その結果として事故が発生したかどうかが争われました。最終的には管制官二名に有罪判決が下されましたが、刑事責任の所在と航空安全についての議論が続き、今後の航空業界における課題が浮き彫りになりました。

事故は航空業界の安全性向上にとって重要な教訓となり、今後の改善につながることが期待されています。

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