日本農業遺産

日本農業遺産について

日本農業遺産（にほんのうぎょういさん）は、農林水産省によって創設された、日本独自の農業遺産を保護するための制度です。これは、国連食糧農業機関（FAO）が提唱する世界農業遺産（GIAHS）の国内版に相当し、初めての候補が公募されたのは2016年度のことです。

この制度の選定基準は、世界農業遺産同様にいくつかの要件が定められています。具体的には、登録後も農業に従事する人々や土地の所有者が生計を確保できること、豊かな生物多様性があること、伝統的な農法が受け継がれていること、農業に関連した文化が存在すること、そしてそれを裏付ける土地利用があることが求められます。

さらに、日本特有の基準として、災害時の回復力、多様な主体（農業法人やNPOなど）の参加の可能性、6次産業の推進が挙げられます。また、伝統産業の継続が100年以上である必要があり、隣接自治体による広域申請が奨励されています。

目的

日本農業遺産の設立には、様々な目的が存在します。日本の農業は高齢化が進み、後継者不足が深刻な問題となっています。このため、耕作放棄地や限界集落が増加し、農業景観も失われつつあります。この状況を打開し、農業の保護と活性化を図ることが重要です。

また、環太平洋戦略的経済連携協定（TPP）やアベノミクス・地方創生といった背景から、農作物のブランド化が求められている現状でもあります。このような背景から、農業遺産制度が農業の保護だけでなく、地域活性化にも寄与することを目指しています。

登録地の概要

登録作業は2年ごとに実施され、偶数年度に選定が行われます。2016年度には、宮城県大崎地域、埼玉県武蔵野地域、山梨県峡東地域、静岡県のわさび栽培地域、新潟県中越地域、三重県の鳥羽・志摩地域、尾鷲地域、徳島県にし阿波地域が初めて選ばれました。各エリアは地元の特有の農業文化や技術を反映したシステムが評価されています。

2018年度には、山形県最上川流域や福井県三方五湖地域など、さらなる地域が認定され、2020年度以降も富山県や兵庫県、宮崎県などが登録積み上げています。

世界農業遺産への進展

国内農業遺産の中から、世界農業遺産へとスケールアップされたものも存在します。例えば、2017年には大崎耕土の水田農業が、2018年には静岡県のわさび栽培が世界遺産に認定されました。

広報と関連事業

知名度向上のため、農林水産省はアグリツーリズムやグリーンツーリズムを通じて、日本農業遺産を広報する取り組みも行っています。また、農と食の景勝地認定制度も同時に進められています。

日本農業遺産制度は、地域を守るための重要な枠組みであり、未来の農業を支える土台ともなっているのです。

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