日産ディーゼル・スペースランナーRP

日産ディーゼル9m大型バス：スペースランナーRP系と観光バスの系譜

日産ディーゼル工業（現UDトラックス）は、かつて9mの大型路線バスと観光バスを製造・販売していました。路線バスはスペースランナーRP、観光バスはスペースアローRP、そしてその後の後継車種であるスペースアローAショートタイプが該当します。これらの車両は、日本のバス業界において特異な存在感を示していました。

9m路線バス：スペースランナーRPの誕生と低迷

1973年以降、9m大型路線バスの製造から遠ざかっていた日産ディーゼルですが、関東バスからの強い要望を受け、1986年に再び9m大型路線バスの製造を再開しました。しかし、市場におけるシェアは、いすゞ自動車が圧倒的な強さを誇る中、日産ディーゼルは常に苦戦を強いられました。

スペースランナーRPの生産は、発注を受けてから国土交通省の型式認定を受けるという、小規模な生産体制で行われていました。そのため、生産台数は常に少なく、市場に大きな影響を与えることはありませんでした。2007年9月以降は、新長期規制への適合が完了したものの、販売は終了しました。

車両の変遷：技術と車体架装の移り変わり

スペースランナーRPは、長年に渡り幾度ものモデルチェンジを繰り返しました。エンジンは、初期型では日産ディーゼル製のFE型エンジンを搭載していましたが、2006年モデルからは日野自動車製のJ07E-TC型エンジンに切り替えられました。これは、排出ガス規制への対応と部品調達の効率化を目的としたものです。

車体架装メーカーも変遷を辿りました。当初は富士重工業が車体架装を担当していましたが、2003年に富士重工業がバス車体製造から撤退した後は、西日本車体工業、そして最終的には三菱ふそうバス製造が車体架装を担当することとなりました。この車体架装メーカーの変更は、スペースランナーRPの生産体制に影響を与え、生産台数の少なさにも繋がったと考えられます。

9m観光バス：スペースアローRPとスペースアローAショートタイプ

9m大型観光バス市場への参入は、路線バスよりも遅れて1991年に行われました。スペースアローRPは、富士重工業と西日本車体工業の車体を採用し、FE6TA型エンジンを搭載していました。スペースアローRPも、路線バスと同様に生産台数が少なく、2005年には生産中止となりました。

その後、3年間の空白期間を経て、2008年から2010年にかけて、三菱ふそうからのOEM供給によるスペースアローAショートタイプが発売されました。この車両は、三菱ふそうのエアロエースショートタイプをベースに製造され、日産ディーゼルブランドで販売されました。しかし、これもまた生産台数は少なく、市場における日産ディーゼルの存在感は依然として限定的なものでした。

ユーザーと市場での立ち位置

スペースランナーRPは、いすゞ自動車の車両が市場を席巻する中、ごく少数の事業者によって導入されました。北海道中央バスや江ノ電バスなどが、その代表的なユーザーです。観光バスについても、西日本鉄道グループや大阪空港交通など、一部の事業者による導入にとどまりました。

日産ディーゼルにとって、9m大型バスは決して主力製品ではありませんでした。そのため、開発や生産においては、常にリソースが限られており、市場での競争力を高めることが困難でした。その結果、スペースランナーRP系は、日本のバス業界におけるニッチな存在として、その歴史を終えることとなりました。

まとめ

スペースランナーRP系バスは、日産ディーゼルの技術力と、時代の変化の中で生まれた、数少ない9m大型バスです。生産台数は少なく、市場でのシェアも低かったものの、独自の技術や特徴を持つ車両として、バス業界の歴史にその名を刻んでいます。その低生産台数、限定的な導入事業者、そして車体架装メーカーの変遷は、日本のバス業界における特殊な事情を反映していると言えるでしょう。また、OEM供給によるスペースアローAショートタイプは、日産ディーゼルが大型観光バス市場において最後の挑戦を行った証と言えるかもしれません。

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