日産・インテリジェントモビリティ

日産・インテリジェントモビリティ

「日産・インテリジェントモビリティ（NISSAN INTELLIGENT MOBILITY）」とは、日産自動車が提唱する、自動車および社会の未来に向けた企業ビジョンと、それを実現するための先進技術や装備の総称です。この概念は、2016年のジュネーブモーターショーで初めて発表されました。日産は、このビジョンを通じて、環境負荷ゼロを目指す「ゼロエミッション」と、交通事故による死傷者ゼロを目指す「ゼロフェイタリティ」という、持続可能で安全なモビリティ社会の実現を究極の目標として掲げています。この目標達成に向け、主に「電動化」と「自動運転」技術の推進を具体的な取り組みとして推進しています。

インテリジェントモビリティを支える3つの柱

インテリジェントモビリティの実現に向け、日産は以下の三つの主要な柱を中心に技術開発とサービス展開を進めています。

インテリジェント・ドライビング（自動運転技術）：より安全で快適な運転体験を提供するための高度な運転支援・自動運転技術の開発。自動運転車の研究開発や、DeNAとの提携による自動運転技術の実証実験なども含まれます。
インテリジェント・パワー（電動化技術）：パワートレインの電動化を推進し、排出ガスゼロのモビリティを目指す取り組み。電気自動車（EV）の開発・普及に加え、独自のハイブリッドシステム「e-POWER」の開発などが含まれます。
* インテリジェント・インテグレーション（コネクテッド技術）：クルマと社会、そして人々とが常時繋がることで、新しいサービスやライフスタイルを創造する取り組み。Microsoftとの提携によるコネクテッド技術開発や、ロックフェラー財団の「100レジリエンス都市プロジェクト」への支援などが挙げられます。

インテリジェントモビリティを具現化する主要な技術と装備

エマージェンシーブレーキ

日産が展開する衝突被害軽減ブレーキシステムの総称です。単眼カメラ、赤外線レーダー、ミリ波レーダーといったセンサーで車両前方の障害物を検知し、衝突の危険が迫ると警報や自動ブレーキによって衝突回避や被害軽減を支援します。多くの日産車や、日産からOEM供給を受ける車種にも採用されています。

プロパイロット

主に高速道路などの自動車専用道路での使用を想定した運転支援機能です。運転自動化レベルとしてはドライバーが主体となるレベル2に位置づけられます。単一車線において、設定した車速や車間距離を維持しながら、白線を認識して車線の中央を走行するようにステアリング操作を支援します。2016年、5代目セレナに初めて搭載された後、リーフやエクストレイル、ノート、デイズなど、日産の主力車種を中心に広く採用されています。一部の車種には、カーナビゲーションシステムと連携し、地図情報に基づいたルートでの支援を行う「ナビリンク機能」も搭載されています。

プロパイロット2.0

プロパイロットのさらなる進化形として登場したシステムです。高速道路のルート走行において、一定の条件を満たす同一車線内で、国産車として初めてハンズオフ（手放し運転）を可能としました。ナビゲーションシステムと連携し、3D高精度地図データを利用することで、目的地までの運転を支援します。ただし、これも運転自動化レベル2の技術であり、ドライバーは常に周囲の状況を監視し、システムからの要求に応じていつでも運転操作を引き継ぐ責任があります。スカイラインハイブリッドやアリア、セレナの一部グレードに採用されています。

インテリジェント ルームミラー

2014年のジュネーブモーターショーで発表された先進装備です。通常のルームミラーとしてだけでなく、車体後部に設置された高解像度カメラの映像を映し出す液晶ディスプレイとしても機能します。荷物などで後方視界が遮られる場合でも、カメラ映像によってクリアな視界を確保できます。ミラー下部のスイッチ一つで表示モードを切り替えることができます。エルグランド、エクストレイル、セレナ、ノート、キックス、ルークスなど、幅広い車種に搭載されています。

e-POWER

日産が開発した独自のシリーズ方式ハイブリッドシステムです。エンジンを発電専用に使い、その電力でモーターを駆動して走行します。これにより、100%モーター駆動ならではの滑らかで力強い加速フィールと、優れた燃費性能を両立させています。特に、アクセルペダルの操作だけで加速から減速、停止までをコントロールできる「e-Pedal」のような機能は、独特の運転体験を提供します。2016年のノートに初搭載された際、その販売台数が大きく伸長するなど高い評価を得ました。その後、セレナ、キックス、ノート オーラ、アリア、サクラなど、様々な車種に展開され、第2世代へと進化しています。2019年にはRJCテクノロジーオブザイヤーを受賞するなど、日産の電動化技術の中核を担っています。

インテリジェントモビリティを象徴するコンセプトカー

日産・IDSコンセプト

インテリジェントモビリティの発表に先立つ2015年に公開されたコンセプトカーです。自動運転とAI技術の融合を示唆し、車外とのコミュニケーションを可能にするディスプレイや、自動運転モードと手動運転モードで変化するインテリアなどを特徴としました。これはインテリジェントモビリティの「インテリジェント・インテグレーション」や「インテリジェント・ドライビング」の方向性を示すものであり、後にそのデザインや思想は2代目リーフに引き継がれました。

日産・Vmotion 2.0

2017年に発表されたコンセプトカーで、日産デザインの特徴である「Vモーション」グリルを強調したスタイリッシュな外観が特徴です。忙しいビジネスパーソンのための将来のモビリティを提案するもので、広々とした室内空間と快適な乗り心地、そしてプロパイロットの搭載など、「インテリジェント・ドライビング」や快適な移動空間という側面を表現しています。このコンセプトで示されたデザイン要素は、その後のアルティマなど、日産の市販車デザインに影響を与えました。

まとめ

日産・インテリジェントモビリティは、単なる技術の羅列ではなく、日産が目指す「人々の生活を豊かにする、持続可能で安全なクルマ社会」という未来像を実現するための包括的な取り組みです。電動化、自動運転、コネクテッド技術といった要素を統合し、クルマとの関わり方や移動のあり方そのものを変革していくことを目指しています。

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