日産・エスカルゴ

エスカルゴ（S-Cargo）の概要

エスカルゴは、1989年から1990年にかけて日産自動車が販売した、フルゴネット型のライトバンです。このユニークな車両は、日産車体によって生産され、多くの商用車モデルの中で特異な存在となっています。

デザインとプラットフォーム

エスカルゴはVN10型パルサーバンのプラットフォームを基にしたパイクカーです。このプラットフォームは、当時の日産の商用車とは異なり、リアにトーションバー・スプリングを採用したフルトレーリングアーム式独立懸架を備えています。この設計により、荷室が非常に低く、リアオーバーハングも短縮されています。また、このパルサーバンのプラットフォームは、初代プレーリーというミニバンにも使用されました。

エスカルゴは、この一連のパイクカーの中で唯一の商用車であり、他のモデルとは異なり台数限定の抽選販売ではなく、予約された分だけが確実に製造されました。車名はフランス語の「カタツムリ」を意味する「Escargot」と、スペイン語の「貨物」を指す「Cargo」を組み合わせたものです。丸みを帯びた独特のシルエットや大きく突出したヘッドランプは、カタツムリをデザインのモチーフとしています。

特徴と機能

車のフロントエンドは、目立つグリルがないパンチングメタル風の仕上げにし、法規内で可能な範囲でヘッドランプを内側に寄せています。ボンネットは特殊な形状で、プレス機による量産が難しいため、職人による手作業で仕上げられました。また、運転席のウインドウは非常に広く、フロントドアのガラスは開閉時に引き残しをなくすために2分割になっています。

エスカルゴは1950年代の「4W61型パトロール」以来、久しぶりにセンターメーターを採用した日産車でもあります。オートマチックトランスミッション（AT）も、当時としては珍しいインパネシフトの設計で、さらに商用車としては異例の専用モデルです。

バリエーション

エスカルゴのバリエーションは、荷室側面の楕円形リアクオーターウィンドウの有無、キャンバストップのあるノーマルルーフなど、合計4タイプ用意されています。廉価モデルにはリアクオーターウィンドウなしのノーマルルーフがあり、最上級モデルは両方を装備する形です。また、オーディオスペースは存在しないため、販売店装着オプションで1DINコンソールを取り付けることができました。

市場での存在感

エスカルゴはその独自のデザインにより、企業のロゴを側面に大きく表示することができ、目を引く宣伝効果があります。1989年1月から1990年12月の2年間で、約1万600台が販売されました。また、通常とは異なるブルーの専用車体色や、横浜バージョンも登場しました。こちらはロープや楕円窓の周囲に船の舵のイラストが施されています。

スペック

• - 型式: R-G20
• - 最低地上高: 165mm
• - 最小回転半径: 4.7m
• - 車体色: ホワイト・グレー・ベージュ・オリーブ
• - ブレーキ形式: 前：ディスク/後：リーディングトレーリング
• - タイヤサイズ: 155R13-6PRLT
• - 使用燃料: レギュラー
• - 燃料タンク容量: 40L
• - 最大積載量: 300kg
• - 新車時価格: 1,220,000円

1990年まで使用されていたリリーフカーも、エスカルゴの改造版でした。このように、エスカルゴは日産の商用車としての歴史に名を刻んでいます。

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