日産・チェリー

チェリー（Cherry）

概要

チェリーは1966年、日産自動車に吸収合併されたプリンス自動車工業が開発した前輪駆動車で、1970年に日産として初めての量産FF車として市場に登場しました。プラットフォームは旧プリンスのエンジニアの手によるもので、東京・荻窪の事業所で改良が進められました。注目すべきは、エンジン横置き型のコンパクトな設計で、信号の信号機構を有しており、当時の自動車業界に新しい風を吹き込んだことです。

荻窪事業所の役割

荻窪事業所はチェリーの開発のほか、スカイラインやローレルなど多くの名車の生産地として広く知られています。中島飛行機の解体後も、自動車開発に特化した拠点として役割を果たし続け、1981年には神奈川県にあるテクニカルセンターに開発機能が集約されました。その後、宇宙航空事業へとシフトしていきました。

初代 E10型の特徴（1970年-1974年）

初代チェリーは、トヨタのパブリカと同クラスに属し、主に自動車の所有を始める若者や、軽自動車からの乗り換えを狙った設計がなされました。セダンとバンのモデルが初めに提供され、オーストラリアの自動車雑誌でも高評価を受けました。また、スポーツカーとしても人気があり、性能向上に向けたキットも販売されました。アーティスト赤い鳥によるテーマソング「ラブリーチェリー」も当車の販促に寄与しました。

エンジンとデザイン

搭載エンジンには、1,000ccと1,200ccの直列4気筒があり、全車がレギュラーガソリン仕様でした。独特の「セミファストバック」スタイルは流体力学を考慮したもので、Cピラーのデザインには富士山を模した説もありました。また、グレードも豊富に設定され、特にX-1はスポーツ寄りの仕様でした。

2代目 F10/11型（1974年-1978年）

2代目は初代よりもワンランク上のモデルとしてリリースされ、エンジンはA14型が追加されました。安全面では、シートベルトの規定が強化され、コラシプル・ステアリングや警告灯の装備が充実しました。このモデルからは秋吉久美子や佐藤允が広告キャラクターとして起用され、幅広い層へのアプローチが図られました。

車名の由来

「チェリー」は英語で「桜」を意味し、新たな国民車の性格を象徴する名前として選ばれました。この名称は日本の車を代表する存在であり続けました。65836台が登録されたこのモデルは、1978年に生産を終了し、パルサーにその座を譲る形で長い歴史に幕を下ろしました。

結論

チェリーは、群を抜いたデザインと技術、さらには広告戦略によって多くの支持を集めた車種として記憶されています。この車は日産自動車の歴史の中で重要な役割を果たし、今なお多くのファンによって愛され続けています。

もう一度検索