日産・VRH35

日産・VRH35エンジンの概要と歴史

日産・VRH35は、1989年に日産自動車によって開発された耐久レース専用のV型8気筒DOHCツインターボエンジンです。レースカーとしての性能を最大限に引き出すために設計され、特にル・マン24時間レースや全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権（JSPC）での活躍が記憶されています。

開発の経緯と背景

1980年代後半、日産はレースの競争力を高めるためにエンジンの改良に取り組んでいました。特に、1987年に登場したVEJ30の開発がきっかけとなり、耐久レースへの本格参戦に向けた取り組みが始まりました。このエンジンは、GE30からの派生で、当初は数々の課題を抱えていました。

その後、1990年に進化を遂げたVRH35Zが姿を現し、日産はこのエンジンを使用してル・マン24時間レースに挑みました。VRH35Zは予選で1,200馬力以上という驚異的な出力を誇り、燃費向上と出力向上を両立させるために設計されたのです。

世界選手権での挑戦

1989年、VRH35はR89Cに搭載され、世界スポーツプロトタイプカー選手権（WSPC）やJSPCに参戦しました。特に、エンジンのストレスマウント化という独自の技術が採用され、剛性を高める工夫がなされました。この新技術により、マシン全体の性能が向上し、レースでの競争力を一層高めました。

ル・マン24時間レースへの挑戦

1990年には、ニッサン・モータースポーツ・ヨーロッパ（NME）チームが10台ものマシンをル・マンに送り込み、驚異的な出力を誇るスペシャルエンジンを準備しました。しかしながら、充分な準備期間を確保できず、レースではトラブルが頻発。結果的に、日産は悲願の優勝を逃しましたが、国際舞台での存在感を示しました。

国内選手権での成功

VRH35ZはJSPCにおいて目覚ましい活躍を見せ、1990年から1992年にかけてチャンピオンを獲得しました。特に1992年には6戦全勝という成績を収め、名実ともに日産の耐久レースエンジンとしての地位を確立しました。また、同年のデイトナ24時間レースでも成功を収め、日産の栄光の歴史を築きました。

再びル・マンへ

1990年代後半、日産は再びル・マン24時間レースに挑戦しますが、他のマシンに対しての明らかなポテンシャル不足が影響し、厳しい結果に終わりました。しかし、VRH35はその後も進化を続け、1995年のル・マンではVRH35Lという改良型が使用されるなど、日産のレースプログラムにおいて重要な役割を果たしました。

スペックと性能

VRH35Zは、総排気量3,496cc、最大出力800PS、最大トルク80Kg-mを誇り、圧縮比は8.5です。この出力は、当時の他社のエンジンを凌駕するものであり、日産の技術力を示す重要な要素となりました。エンジンは軽量化も図られており、185kgという重量で高い出力性能を実現しました。

VRH35エンジンはその後、1998年のル・マンで総合3位を獲得するなど、日産のレースエンジンとしての伝説を築き続けました。日産の栄光の歴史を体現するエンジンとして、今なおファンの心に残る存在です。

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