日笠端

日笠 端（ひがさ ただし、1920年7月16日 - 1997年10月30日）は、20世紀後半の日本における重要な都市計画家、都市研究者、そして教育者です。特に住区計画理論の分野で知られ、東京大学名誉教授の称号を有していました。

彼の学歴は、旧制府立高等学校を経て、1943年に東京帝国大学工学部建築学科を卒業したことに始まります。卒業後、陸軍技術研究所での勤務を経て、戦後間もない1945年には新たに設置された戦災復興院総裁官房技術研究所に技師として加わりました。この時期から、日本の戦後復興における都市計画の現場に関わることになります。

1949年に戦災復興院が改組され建設省建築研究所となっても引き続き所属し、やがて都市計画研究室長を務めるなど、官庁の研究機関において都市計画の実務と研究に深く携わりました。

大学での教育活動も早くから始めており、1948年からは芝浦工業大学の非常勤講師を兼任していました。1955年には、同大学内に石黒哲郎と共に都市計画研究室を設立し、後進の指導や研究体制の構築にも力を注ぎました。また、同大学の教員らと協力し、第一生命本社進出に伴う神奈川県大井町の都市計画策定に関わるなど、具体的な地域開発プロジェクトにも参画しています。

1964年には工学博士号を取得。同年、教育・研究の中心を東京大学に移し、工学部都市工学科の教授に就任しました。東京大学では都市計画の研究と教育に専念し、1968年からは大井町都市計画に関する研究を大学の研究室で継続するなど、理論と実践を結びつける活動を展開しました。

1981年に東京大学を退官した後は、東京理科大学の教授として引き続き教鞭をとり、1996年に退職するまで教育・研究活動を続けました。

教育・研究職に加え、日笠端は日本の都市計画分野における様々な重要な役職を歴任しました。これには、日本都市計画学会の会長職をはじめ、都市計画中央審議会、建築審議会、住宅宅地審議会といった国の重要な諮問機関の委員、自治省コニュニティ研究会座長、東京都国土利用計画地方審議会会長、東京都住宅対策懇談会座長などが含まれます。これらの公職を通じて、国の都市計画政策や制度の形成に大きな影響を与えました。

彼の主な著作には、都市計画に関する専門書や、市町村レベルでの都市計画の実務に関する著作があります。代表的な著書としては、『都市計画』（共立出版）、『市町村の都市計画』（共立出版）、『新首都・多極分散論』（一河秀洋、田中啓一と共著、有斐閣）、『先進諸国における都市計画手法の考察』（共立出版）などがあります。これらの著書は、後世の研究者や実務家にとって重要な文献となっています。

また、彼の研究活動は国内にとどまらず、海外の都市計画に関する知見を日本に紹介することにも及びました。ガリオン＆アイスナー著『アーバン・パターン - 都市の計画と設計』の翻訳（森村道美、土井幸平と共訳、日本評論社）は、その一例です。彼の業績や人となりは、追悼記事などでも高く評価されています。

日笠端は、戦後の日本の混乱期から高度成長期、そしてその後の成熟期にかけて、都市計画の教育、研究、実務、そして政策形成の各方面で指導的な役割を果たし、日本の都市空間形成に多大な貢献をした人物と言えるでしょう。

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