日輪の遺産

概要

『日輪の遺産』は、浅田次郎による長編小説で、1993年に青樹社から刊行されました。その後、講談社と徳間書店から文庫化され、浅田次郎自身が「若書き」と評する初期の作品ながら、50万部を売り上げるほどの人気を博しました。物語は、終戦間際の混乱期に隠された巨額の財宝を巡る陰謀と、それに翻弄される人々の運命を描いています。

あらすじ

1992年12月、地上げ屋の丹羽明人は、府中競馬場で出会った老人・真柴から古い手帳を託されます。その手帳には、「府中競馬場から見える山林に莫大な財宝が隠されている」という驚くべき内容が記されていました。真柴の死後、地元の地主である金原が現れ、財宝について何か知っている様子を見せます。丹羽は、真柴から秘密を託された福祉活動家の海老沢と共に、旧日本軍とマッカーサー将軍が終戦前後に繰り広げた財宝の奪い合いの秘密に迫ります。

登場人物

真柴少佐: 近衛師団所属のエリート軍人。軍の上層部から極秘任務を命じられます。
小泉主計中尉: 東京帝大を首席で卒業した大蔵官僚。真柴と共に極秘任務に就きます。
曹長: 中国戦線で長く戦った人物で、真柴の運転手として活躍します。本名は不明です（映画では「望月」）。
金原: 武蔵小玉市の大地主で元市議。財宝についても何かを知っているようです。
丹羽明人: お人好しの地上げ屋。ひょんなことから財宝の謎を追うことになります。
海老沢: 武蔵小玉市で福祉関係のNPOを運営する男。丹羽と共に財宝の秘密を追います。
イガラシ中尉: 日系2世のアメリカ軍人。マッカーサーの通訳を務めるうちに、財宝を巡る陰謀に巻き込まれます。
野口孝吉: 女学校の英語教員。財宝の秘匿作業に協力させられます。
久枝: 女学校の生徒。財宝の秘匿作業に協力させられる女学生たちのリーダーです。

映画化

2011年には、同タイトルの『日輪の遺産』として角川映画系で映画化されました。監督は佐々部清、主演は堺雅人です。映画では、太平洋戦争終戦末期、マッカーサーの財宝を巡る極秘作戦に関わった帝国陸軍将校たちと、20名の少女たちの運命が描かれています。

ストーリー

物語は、2011年と終戦間際の1945年という二つの時代を交錯させながら展開します。元在日米軍司令のイガラシが、日系アメリカ人の新聞記者ダニエル・ニシオカの取材を受けるところから始まります。イガラシはマッカーサーとの出会いを語り、マッカーサーが「私の宝、父の遺産はどこだ？」と呟いたと明かします。一方、日本では、戦時中に空襲で亡くなった女子生徒を悼む石碑を眺めていた老人・金原が急逝します。金原の遺言で密葬が行われ、その遺産のほとんどは市に寄付されることになります。金原の妻・久枝は、真柴の手帳を基に過去を語り始めます。

1945年8月10日、真柴少佐らは、阿南惟幾陸軍大臣ら軍の上層部から、山下将軍がフィリピンで奪取したマッカーサーの財宝を、秘密裏に武蔵小玉の南多摩陸軍火工廠へ移送し隠匿せよという密命を受けます。真柴は小泉中尉らと共に、女学校の教師と20名の少女たちを動員して財宝隠しを行います。しかし、任務の終盤に上層部から非情な命令が下され、真柴らは少女たちを救おうと奔走します。終戦後、真柴は望月曹長と共に、久枝から大根漬けを受け取り、梅津元参謀総長を見舞います。一方、大蔵省に戻った小泉は、マッカーサーとの交渉に臨みますが、最終的には自決します。財宝の在処を発見したマッカーサーは、イガラシに生涯に渡る極秘命令を下します。

キャスト

真柴司郎: 堺雅人
望月庄造: 中村獅童
小泉重雄: 福士誠治
野口孝吉: ユースケ・サンタマリア
久枝: 森迫永依
スーちゃん: 土屋太鳳
阿南惟幾: 柴俊夫
梅津美治郎: 串田和美
ダグラス・マッカーサー: ジョン・サヴェージ
イガラシ中尉: 三船力也
金原久枝: 八千草薫
マイケル・エツオ・イガラシ: ミッキー・カーチス

スタッフ

監督: 佐々部清
原作: 浅田次郎
脚本: 青島武
音楽: 加羽沢美濃

モデル

武蔵小玉市: 稲城市がモデル。
米軍南多摩キャンプ: 多摩サービス補助施設がモデル。
武蔵小玉市立病院: 稲城市立病院がモデル。
* 作中の女学校: 堀越高等学校の前身である堀越高等女学校がモデル。

その他

映画では、元ちとせが歌うイメージソング「永遠(トワ)の調べ」が使用されています。この曲は、スコットランド民謡「アニー・ローリー」を原曲としています。

『日輪の遺産』は、戦時下の混乱と、そこで生きた人々の複雑な感情を描いた作品として、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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