日野・A09Cエンジン

日野自動車 A09Cエンジン：詳細解説

A09Cエンジンは、日野自動車が製造する直列6気筒ディーゼルエンジンです。主に同社の大型トラック「プロフィア」（SS車以外）、大型観光バス「セレガ」（QRG車〈360PS〉およびハイブリッド車）、梯子付消防車「MH-II」（BDG車以降〈360PS〉）、いすゞ自動車の大型観光バス「ガーラ」（QRG車〈360PS〉）、連節バスであるブルーリボン ハイブリッド 連節バス、そしてエルガデュオに搭載されています。

概要

2007年に、それまで主力であったP11Cエンジンの後継として登場しました。排気量8,866cc、内径112mm×行程150mmの直列6気筒構造を持ち、SOHC24バルブ（1気筒あたり4バルブ）を採用しています。

特徴

A09Cエンジンは、環境性能と高出力を両立するために、以下の先進技術が投入されています。

可変ノズルターボ（A09C-VAエンジンは2ステージターボ）: エンジンの回転数や負荷に応じてターボチャージャーの性能を最適化し、効率的な過給を実現します。
クールドEGR（排気再循環）: 排気ガスの一部を冷却して再度吸気することで、燃焼温度を下げ、窒素酸化物（NOx）の排出量を削減します。
DPR（Diesel Particulate filter：ディーゼル微粒子捕集フィルター）: 排気ガス中のPM（粒子状物質）を捕集し、除去します。
コモンレール燃料噴射システム: 燃料を高圧で蓄圧し、電子制御されたインジェクターから精密に燃料を噴射することで、燃焼効率を向上させ、排出ガスを低減します。

これらの技術により、A09Cエンジンは平成17年排出ガス規制以降の厳しい自動車排出ガス規制に適合しています。

また、E13Cエンジンよりもコンパクトな設計であるため、キャブ位置の低い車種やショートキャブ仕様のセミトラクタなど、幅広い車種への搭載に対応できるのも特徴です。

ラインアップ

A09Cエンジンは、すべてインタークーラーターボ付きで、様々な出力特性のものが用意されています。A09C-1M系は、電動機との組み合わせによるハイブリッド方式を採用しています。

データ不正問題と型式指定取り消し

2022年3月、A09Cエンジンにおいて、排気ガス性能の劣化耐久性試験におけるデータ不正が発覚し、出荷が停止されました。この不正は、自動車の型式指定制度の根幹を揺るがすものであり、国土交通省は厳正な処分を下しました。その結果、道路運送車両法施行後初となる型式指定の取り消しという、極めて重い処分が科せられました。この問題は、日野自動車の企業体質に対する信頼を大きく損なう事態となり、今後の再発防止策と信頼回復に向けた取り組みが求められています。

関連項目

* 日野・E13Cエンジン

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