日銀考査

日銀考査について

日銀考査（にちぎんこうさ）とは、日本銀行が金融システムの信用を守るために実施する調査のことです。この調査は、日本銀行法に基づき、取引先の金融機関に対して行われます。対象となる機関は多岐にわたり、国内の銀行や外国銀行の日本支店、信用金庫、証券会社などが含まれます。

歴史的背景

日銀考査の起源は、第一次世界大戦後に起こった大戦景気の崩壊と戦後恐慌に遡ります。1920年にこれが発生した際、日本の経済制度をより強化する必要があると認識された結果、1926年には金融制度調査会が設置されました。この委員会は、大蔵大臣に対して、金融機関への定期的な検査の実施を提案しました。

1927年5月には、大蔵省銀行局検査課が設立され、続いて1928年6月には日本銀行考査部が新たに設置されることとなりました。この動きは、松本大蔵省銀行局長が衆議院で行った説明に基づいており、銀行検査と日銀考査を連携させる「交互原則」が導入されました。この原則により、両者の検査は交互に実施され、内容も似通ったものとなっていました。

法的な立場の変化

1882年に施行された日本銀行条例や1942年の日本銀行法には、考査に関する具体的な規定は存在しませんでしたが、1998年に新しい日本銀行法が施行されたことで状況が変わりました。この法律では、考査が日本銀行の業務の一環として位置づけられ、金融機関等との間で考査に関する契約を結ぶことが認められました。

これにより、日銀考査は法的に明確な地位を得た一方で、金融庁の金融検査とは異なる根拠を持つことになりました。現在、交互原則は存在しないものの、両者の検査内容には一定の類似点があります。金融検査は法令遵守や消費者保護を重視するのに対して、日銀考査は金融機関の支払不能が金融システム全体に及ぼすリスクを防ぐことに重きを置いています。

考査の実施状況

日銀考査は一般的に、一つの金融機関に対して1週間から4週間の期間で実施されます。実施にあたっては「考査チーム」と呼ばれる集団が編成され、これに所属する日本銀行の職員が「考査員」として活動します。また、そのチームのリーダーを務める職員は「考査役」と呼ばれます。考査で得られた情報は厳格に守秘され、金融庁への情報提供を除いて公開されません。

事例

1998年にはバブル崩壊後の金融危機が顕在化しており、アメリカ合衆国の財務副長官であるローレンス・サマーズが日銀考査資料の提供を求めました。しかし、当時の日本銀行総裁速水優からの指示に対し、信用機構担当理事の安斎隆はその要請に応じず、結局情報提供は行われませんでした。この事例は日銀の考査の重要性と守秘性を示す一例となっています。

まとめ

日銀考査は、日本銀行が金融システムの安定性を確保するために不可欠な機能を果たしています。その歴史的背景や法的地位、実施方法の理解が、現代の金融制度を理解する上で重要な要素となるでしょう。

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