日韓高速船

日韓高速船株式会社の概要と歴史

日韓高速船株式会社は、かつて存在した日本の海運会社であり、日本と韓国間の高速輸送を目的として1990年に設立されました。この会社は、下関と釜山を結ぶ航路を運航するために、大阪商船三井船舶や地元企業の林兼産業、さらに下関市が共同で立ち上げた第三セクターです。

設立の背景と運航開始

設立のきっかけとなったのは、1990年10月に釜山で開催された日韓海運に関する政府間協議でした。この協議により、両国間の海運業務が推進されることが決定しました。当初は、韓国側が運航する初の船舶を予定していましたが、準備が整わなかったため、日本側が先に運航を開始することとなりました。実際の運航は、1991年7月に開始されました。

集客の苦難と経営破綻

日韓高速船は運航開始当初から、乗客の獲得に苦しんでいました。このため、小倉を経由することで観光客の取り込みを試みましたが、効果は限定的でした。1992年12月には、航路の運航を一時休止することに決定し、最終的にこの会社は経営破綻を迎えました。この時期には、九州旅客鉄道が新たに運航を開始した博多と釜山を結ぶジェットフォイル（ビートル）が日本からの観光客を積極的に受け入れるようになり、成功を収めていました。

日韓高速船の倒産と同時期に博多-釜山路線が発展を見せていたことは、この会社の経営難を際立たせました。特に、1993年の大田国際博覧会を契機に、日本人観光客のビザが段階的に緩和されたことで、博多-釜山航路は急成長を遂げました。この機会に乗じて、日韓高速船の競争相手が順調に運航を拡大していく中、日韓高速船は取り残されてしまったのです。

借入金の補填と争い

日韓高速船の破綻後、下関市はその債務処理に苦慮しました。具体的には、3億8千万円の銀行借入金および4億6500万円の傭船解約金に対する補助金を支出することになりました。この支出を不適切とみなした市民たちは、当時の市長である亀田博に対して損害賠償を請求しました。この訴訟では、第一審で全額弁済の判決を受け、第二審では銀行借入金の弁済義務が命じられました。しかし、2005年11月の最高裁判決では、最終的に市民側が敗訴し、損害賠償請求は棄却されました。

航路と船舶情報

日韓高速船が運航していた航路は、下関港（下関国際フェリーセンター）から小倉港を経て釜山港まででした。就航当初の航海時間は3時間15分であり、小倉寄港が開始されてからは3時間45分で、1日1往復の運航を実施していました。船舶は関西汽船から供給されたジェットフォイル1隻が用いられており、その名は「ジェット8」と呼ばれていました。

この船は1980年に就航したボーイング929（929-117）で、26番艇として運航されていました。しかし、航路が廃止された後の1996年8月には佐渡汽船に売却され、ファルコンとなりました。その後、2000年には九州郵船に売却され、名をヴィーナス2として再び航路に戻ることになりました。

日韓高速船株式会社の歴史は、海運業における挑戦と競争の激化を象徴するものであり、その急速な登場と衰退は、時代の変化を如実に表しています。

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