日高亀市

日高亀市：水産革命と地域貢献の生涯

日高亀市（1845年 - 1917年）は、明治時代に日本の水産業界に大きな足跡を残した実業家であり、漁業技術の改良者です。彼は、従来の漁法にとらわれず、革新的な技術を開発し、ブリの大量捕獲を可能にしました。その結果、巨万の富を築き、「ブリ大尽」と称される一方で、地域社会への貢献も惜しまず、その功績は今もなお讃えられています。

生い立ちと漁業への挑戦

亀市は、1845年に日向国（現在の宮崎県）の網元の四男として生まれました。当時、赤水村周辺はイワシやアジ、そしてブリなどの好漁場として知られていました。しかし、漁法は一本釣りに頼るのが主流で、効率的な漁獲が課題となっていました。亀市の父は刺網の改良に取り組みましたが、大型のブリを捕獲するには困難を極めました。

革新的な漁法の開発

1874年、亀市は父とともに沖取追込網を考案し、イワシの大量捕獲に成功しました。この成功を機に、ブリの大量捕獲を目指しましたが、父の他界により、その遺志を継ぐことになります。翌年、亀市は「ブリ沖廻刺網」を完成させ、一度に3000尾ものブリを捕獲するという画期的な成果を上げました。しかし、この漁法が普及するにつれてブリの回遊量が減少し、過剰操業も重なり、赤水湾は不漁に陥り、1884年には廃業を余儀なくされました。

「日高式大敷網」と水産革命

1891年、亀市は長男の栄三郎とともに「大敷網」の研究を開始し、試行錯誤を重ねた結果、1892年に一網3500尾ものブリの捕獲に成功しました。この大漁は連日続き、亀市の開発した「日高式大敷網」は全国に広まりました。この網は、麻製の身網を大型化したのが特徴で、水産界の革命と称され、近代定置網漁業発展の基礎を築きました。1894年には36万尾という驚異的な漁獲高を記録しましたが、模倣が横行し、漁獲量は減少してしまいます。

「ブリ大謀網」とさらなる飛躍

漁獲量の減少に対応するため、亀市はさらに網の改良に取り組み、1910年には「ブリ大謀網」を考案しました。これにより、漁期を通して18万2000尾のブリを水揚げし、関西方面への出荷を拡大。その結果、亀市は「ブリ大尽」と呼ばれるほどの巨万の富を築きました。この「ブリ大謀網」は、1909年の日英博覧会で1等賞を獲得し、実用新案の認定も受けています。

地域社会への貢献と晩年

1914年、亀市は70万尾／80万円（当時の宮崎県の歳出予算の約6割）という記録的な漁獲高を達成しました。この成功により、「ブリ御殿」と呼ばれる邸宅を新築し、長男の栄三郎は貴族院議員に選出されました。また、亀市はブリの豊漁によって得た財産を地域社会に還元し、道路や灯台の建設に貢献しました。地域住民に慕われながら、1917年に72歳で生涯を閉じました。彼の死後、湾を見下ろす台地に石像が建てられ、その功績が称えられています。

人物像と関連施設

亀市は、ブリ漁が最盛期の頃、ブリの動きを監視するために「ブリ見山」に上り、漁船に手旗で指示を出していました。晩年も、毎日ブリ見山に登り海を眺めていたと伝えられています。

関連する施設として、以下のものがあります。

日高家住宅（ブリ御殿）: 27LDKの大邸宅で、現在は国の重要文化財に指定されています。
日高亀市銅像: 三松緑地に設置されています。
ブリ見山: 亀市がブリの魚群を監視した山です。
日高亀市墓所: 名水小学校のそばにあります。

まとめ

日高亀市は、その革新的な漁業技術と地域社会への貢献によって、日本の水産業界に大きな影響を与えた人物です。彼の生涯は、不屈の精神と地域への愛に満ちており、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

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