日高恒太朗

日高恒太朗（ひだか こうたろう、1952年3月 - 2014年11月3日）は、日本のノンフィクション作家であり、その生涯は波乱に満ちていました。本名は盛久。彼は、タンカーなど外国航路船舶の一等航海士という異色の経歴を持ちながら、1977年に日本テレビの放送作家に転身。その後、事件ライターとしてその才能を開花させました。

特に、彼の代表作である『不時着』は、特攻隊員として出撃しながらも、エンジントラブルなどで生還した23人の元隊員たちへのインタビューを基にしたノンフィクション作品です。この作品で、日高は2005年の第58回日本推理作家協会賞（評論その他の部門）を受賞しました。彼らの心の深淵に迫り、戦争の悲劇と人間の強さを描き出したこの作品は、多くの読者の心を揺さぶりました。

日高の人生は、二度の結婚と離婚を経験するなど、私生活においても複雑なものでした。後妻との間には子供がいましたが、離婚後、子供は彼女が引き取っています。

生い立ちと経歴

日高は鹿児島県種子島の出身です。中学卒業前には高校受験のために大阪の叔父の家に下宿しました。その後、三重県にある国立鳥羽商船高等専門学校を卒業し、外航船の乗組員としてキャリアをスタートさせます。しかし、1973年のオイルショックの影響で、勤務していた海運会社が倒産。当時22歳で既婚者であった日高は、フリーター生活を送りながら、今村昌平の横浜放送映画専門学校に籍を置いていました。

経済的な理由から映画学校は中退せざるを得ませんでしたが、今村昌平の推薦によってテレビ番組の構成者として新たなキャリアをスタートさせます。しかし、放送業界の「仕事と遊びの境界が曖昧」な環境に馴染めなかった妻との関係は悪化し、船を降りてから3年後、離婚に至りました。最初の妻は同じ種子島出身でした。1982年からはフリーライターとして活動を開始します。

交友関係

日高は、その多彩な人生の中で多くの人物と交流を持ちました。

田村孟：映画学校の非常勤講師であり、日高の才能を認めていました。田村は日高が航海士時代に書き溜めていた原稿を批判しつつも、彼の才能を認め、映画脚本の相談相手となりました。
仲間徹：1983年に沖縄で知り合い、仲間が開いた翻訳事務所で米兵との「交際」のために「翻訳」を必要としていた女性たちを取材しました。
波平弁護士：仲間徹を通じて知り合った宮古高校の3期後輩で、日高に取材のアパートを提供し、叔父の波平暁男の生涯を世間に広めることを依頼しました。
中川勉：「テレビ朝日やらせリンチ事件」で逮捕された元ディレクターで、事件以前からの友人。日高の『不時着』取材にも同行しました。

著作

日高は、ノンフィクション作家として多数の作品を発表しています。主な著書には以下のようなものがあります。

『新興宗教はなぜ流行るか』（1992年）
『オウムの黙示録 新興宗教はなぜ流行るか』（1995年）
『島の食事 種子島・屋久島・吐噶喇紀行』（2001年）
『不時着』（2004年）
『名も知らぬ遠き島より ひとり身の渚を枕に「種子島・屋久島・吐噶喇」亜熱帯漂流』（2006年）
『日本震撼事件100 戦後殺人ファイル ヒトはなぜ人を殺すことができるのか!? 殺人鬼-その凶悪は絶対許せない』（編、2006年）
『別冊歴史読本 新・殺人百科データファイル 明治・大正・昭和・平成殺人の貌101』（2008年）
『日本の女殺人犯101 江戸・明治・大正・昭和・平成』（2008年）
* 『辺海放浪 東シナ海国境なき島々』（2009年）

これらの作品を通して、日高は事件や社会現象の深層を鋭くえぐり出すとともに、人間の内面を深く考察し、読者に問いかけました。彼の作品は、ノンフィクション文学の重要な一翼を担っています。

日高恒太朗は、その波瀾万丈な人生経験と、幅広い交友関係、そして卓越した執筆能力によって、日本のノンフィクション文学に大きな足跡を残しました。

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