旧ハンター住宅

旧ハンター住宅：明治期の洋風建築の傑作

1889年頃、神戸に建てられた異人館「旧ハンター住宅」。現在は神戸市灘区の王子動物園内にあり、その圧倒的な存在感と歴史的価値から、国の重要文化財に指定されています。現存する異人館の中でも最大規模を誇り、明治時代の洋風建築を代表する建造物として高く評価されています。

歴史：ドイツからイギリスへ、そして神戸へ

旧ハンター住宅の起源は、1889年頃（明治22年頃）にさかのぼります。ドイツ人のA.グレッピー氏が、イギリス人技師を雇って、現在の神戸外国倶楽部のある場所に建設したと伝えられています。建築届が出されたのは1890年（明治23年）。設計者については諸説ありますが、確証を得るには至っていません。

その後、1907年頃、イギリスの実業家エドワード・ハズレット・ハンター氏が住宅を購入し、神戸市中央区北野町へ移築、大規模な改修を行いました。ハンター氏は、当時日本で造船や鉄鋼事業を展開し、日立造船の前身となる会社を設立した人物です。移築に伴い、住宅は大きく様変わりしました。特に、開放されていたベランダには、当時貴重なガラス窓が全面に嵌め込まれ、現在の特徴的な外観が形成されました。

1963年には、北野町から王子動物園へと再び移築され、国の重要文化財として保存されることになりました。現在もその美しい姿を残し、多くの来訪者を引きつけています。ちなみに、旧ハンター住宅があった北野町には、その名残として「ハンター坂」という地名が残っています。また、1984年には、郵便記念切手「近代洋風建築シリーズ」の図案にも採用されました。

建築概要：洗練されたデザインと機能性

旧ハンター住宅は、南を正面とした2階建ての建物で、西北隅には3階建ての塔屋が付属しています。塔屋1階部分には玄関があり、そこから東西に廊下、そして南側に3つの部屋が並ぶ片廊下式の間取りとなっています。1階の3つの部屋は、書斎、応接室、食堂と名付けられていますが、創建当時の用途は定かではありません。

1階の南側と東側には、菱格子を組み込んだガラス戸で囲まれたベランダがあり、南側のベランダには2箇所に突出部、そしてその上部にはペディメント（切妻破風）が設けられています。さらに、1階居室には、ベランダの突出部に対応した位置にベイウィンドー（出窓）が張り出しています。創建時はベランダが開放的で、ベイウィンドーが外に面した状態だったと推測されています。2階には4つの部屋があり、寝室3室と居間として使われていたと見られています。

アクセスと周辺情報

旧ハンター住宅を訪れるには、阪急神戸本線王子公園駅から徒歩5分、JR神戸線（東海道本線）灘駅から徒歩10分です。周辺には、兵庫県立美術館、神戸文学館、神戸市王子スタジアムなど、見どころも満載です。

開館情報

開館日は季節によって異なります。4月～5月、10月と、水曜日以外の開館ですが、6月～7月、9月、11月～12月、3月は土日祝日のみ開館となります。春休み期間中は平日も開館します。休館日は動物園の休園日（水曜日ですが祝祭日の場合は開園）と、12月29日～1月1日です。開館時間は、9時30分～16時30分（11月、12月は16時まで）です。

まとめ：歴史と美しさを体感できる異人館

旧ハンター住宅は、単なる建造物ではなく、明治期の国際的な交流、建築技術、そして生活文化を凝縮した貴重な遺産です。その歴史、建築、そして周辺環境を理解することで、より深い感動と学びを得ることができるでしょう。神戸を訪れた際には、ぜひ足を運んで、その魅力を体感してみてください。

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