旭 (米)

旭（あさひ）: 日本の米の品種

概要

旭（あさひ）は、古くから栽培されてきた日本の米の一品種で、主に昭和初期までの日本の米作りに重要な役割を果たしました。特に明治時代に発見され、美味しさが評価されることで広く栽培されるようになりました。良食味品種のルーツの一つともされ、今なおその影響を受けています。

発見の経緯

この米の品種は、1908年（明治41年）に京都府乙訓郡向日町の山本新次郎によって発見されました。彼は、自らが栽培していた「日の出」という品種の稲の中から、倒伏せずに大粒の籾をつけた二穂の変異株を見つけました。山本は、これを育てる意味を込めて「朝日」と名付けましたが、既に丹後地方で朝という名前の米があったため、最終的には「旭」と改名されました。また、京都旭という名でも知られるようになり、一部地域では「朝日」という呼称も使われています。

その後、向日市ではさらなる選抜が行われ、1915年（大正4年）には「旭1号」が原種登録されました。1920年（大正9年）には奨励品種として認められ、全国的な普及が進みました。山本は他の地域の試験場にも種籾を送り、全国的に栽培されるようになりました。向日市の物集女の街道沿いには、彼の業績を讃える「旭米顕彰碑」が建立されています。

普及と人気

旭の特徴として、大粒で美味しい点が挙げられます。同じ体積でも重みがあるため、西日本では特に評価を受け、昭和10年代には最も多く作付けされる品種となりました。その結果、西日本では「神力」に取って代わり、最大時には50万ヘクタールまで作付け面積が広がりました。また、東日本の「亀の尾」と一緒に「東の亀の尾、西の旭」と称されるようになりました。

しかし、戦後には機械収穫が始まり、機械作業に向かない旭は次第に作付けが減っていきました。これにより、新しい品種が次々と開発されていく時代となり、旭の栽培は減少していきました。

品種改良の進展

旭の発展と共に、様々な選抜や交配が行われ、晩生種から早生、中生種に至るまで多様な品種が生まれました。その中には「愛知旭」「滋賀旭」「大阪旭」といった地域特有の品種も含まれています。さらには、兵庫や岡山では導入時から旭の名前の米があったため、これらは「朝日」と呼ばれるようになりました。岡山県での「朝日」は、1930年（昭和5年）に選抜された「朝日47号」が多くの生産に使われています。

旭は、現在も多くの品種の祖先として重要な役割を果たしています。例えば、兵庫県立農事試験場での交配により「農林8号」が、宮城県立農事試験場では「東北24号」が生み出され、それらから「ササシグレ」「農林22号」、さらには「コシヒカリ」や「ハツニシキ」といった著名な品種が発展しています。

現在の動向

現在も、栽培しやすい品種が普及している中で、旭は幻のお米と見なされる時期もありました。しかし近年では、旭を使用した新しい商品が登場しており、日本酒の世界でも旭米を用いた逸品が生まれてきました。例えば、伏見区の増田徳兵衛商店では、旭4号を使用した清酒「月の桂」が製造されています。これにより、旭の名は再び注目を集めています。

関連項目

• - イネ
• - 亀の尾
• - 祝 (米) - 京都府の酒米

このように、旭は日本の稲作の歴史において重要な位置を占めており、今後の品種改良や新しい商品の開発によって、さらなる可能性を秘めています。

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