物集女

物集女（もずめ）：歴史と文化の交差する地

京都府向日市に位置する物集女（もずめ）地区は、悠久の歴史を刻む地域です。古くは山城国乙訓郡に属し、物集女荘、物集女村として栄え、現在の向日市の一部を形成しています。1889年の市制町村制施行に伴い向日町（後の向日市）に合併されましたが、現在も地名として人々の生活に根付いています。公的文書では「物集女地区」と表記されることもありますが、住所表示では「物集女町」が用いられています。

遺跡と古代史

物集女地区周辺には、縄文時代から人々が居住していた痕跡が残されています。古墳時代後期には、物集女車塚古墳が造営され、当時の生活や社会構造を知る上で貴重な資料となっています。また、『日本紀略』によると、承和7年（840年）には淳和天皇の火葬が物集女で行われ、その火葬塚があったと伝えられています。これらの史実から、物集女が古くから重要な場所であったことがわかります。

中世の豪族と城跡

中世には、物集女氏という国人勢力がこの地を支配していました。彼らは物集女城を拠点として勢力を拡大しましたが、1575年、織田信長の支配下にあった細川藤孝によって滅ぼされました。現在、物集女城跡の一部である堀や土塁が残っており、当時の面影を偲ばせる貴重な史跡となっています。

地名の由来と変化

「物集女」という地名の由来は諸説ありますが、「河内国大鳥郡の百舌鳥（もず）から移住してきた一族に由来する」という説も存在します。読み方については、『和名類聚抄』に「毛都米（もづめ）」と記されており、古くは「もづめ」と読まれていたようです。その後、「もずめ」へと変化し、『太平記』などでは「鵙目（もずめ）」と表記されることもありました。地名表記の変化は、時代の変遷や人々の認識の変化を反映していると言えるでしょう。

物集女に関連する名称

物集女という地名は、様々な名称に用いられてきました。以下に、その例を紹介します。

物集女街道: 京都の中心市街地をバイパスする街道で、山陰街道と西国街道を繋いでいました。現在では府道西京高槻線の愛称となっています。この街道は、物集女地区の交通の要衝としての役割を示しています。

物集女駅: 1946年に開業した阪急電鉄京都本線（現在の洛西口駅付近）の駅ですが、1948年に廃止されました。短い期間の営業でしたが、地域の交通史において重要な位置を占めています。


物集女は、歴史の重みを感じさせる、静かな魅力を持つ地域です。古代からの歴史、中世の豪族、そして近代の交通発展まで、様々な時代の痕跡が現在も残されています。今後も、この地域の歴史と文化を大切に受け継いでいくことが重要です。

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