明日は来らず

明日は来らず（Make Way for Tomorrow）

1937年にレオ・マッケリー監督によって制作された『明日は来らず』は、アメリカのドラマ映画の中で特に評価が高い作品の一つです。この作品は、家を失った老夫婦がそれぞれの子供たちに引き取られ、別れの苦悩を描いています。物語の中心には、70歳前後の夫婦がいます。彼らは長年住み慣れた家を手放すことになり、5人の子供たちに面倒をみてもらうことになります。

しかし、老夫婦が一緒に暮らすことは叶わず、妻は長男の家に引き取られることになります。ところが、長男の妻は社交的であり、ブリッジを教えながら忙しい日々を送っています。老夫婦の妻はその生活に溶け込むことができず、母親としての役割にも戸惑いを覚えます。さらに、長男の家では、娘が母親を置き去りにして恋人との時間を優先するなど、家族間の絆が試される事態が発生します。

老夫婦の夫は、妻の不安に気づきつつも、何もできない無力感を抱えています。この物語では、愛されていたはずの子供たちに対する期待が裏切られ、心のすれ違いが深刻化します。その中で、二人の老夫婦は互いを支え合いながらも、次第に孤独を感じるようになっていくのです。やがて、夫は父親としての責任を感じつつも、自身がどれだけ妻を支えられるのか悩むことになります。

最終的に、妻は女性専用の老人ホームに入ることを決意し、夫とは別れる決断を下します。このシーンは、彼らの甘美な愛情と悲しみが入り混じり、観客に強い感情的な影響を与えます。

本作は、ジョセフィン・ローレンスの小説『The Years Are So Long』を原作にしており、脚本はヴィナ・デルマーが手掛けています。レオ・マッケリーはこの作品を自身の最高傑作と認識していましたが、同年に発表された『新婚道中記』がアカデミー監督賞にノミネートされる一方、『明日は来らず』は未能登場でした。

この映画の評価は年々高まり、2003年にはスティーヴン・ジェイ・シュナイダーの「死ぬまでに観たい映画1001本」にも選ばれ、また2010年にはアメリカ議会図書館によってアメリカ国立フィルム登録簿に選出されました。さらに、小津安二郎監督の名作『東京物語』もこの作品から影響を受けていると言われています。

キャストには、ヴィクター・ムーアが夫役のバークレーを、ビューラ・ボンディが妻役のルーシーを演じています。その他にも、トーマス・ミッチェル、フェイ・ベインターなどの実力派俳優たちが共演し、印象深い演技を披露しました。

『明日は来らず』は、家族のつながりや愛情、そして人生の無常さを考えさせられる映画であり、時代を超えて多くの人々の心に響き続けています。

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