明星院 (桶川市)

明星院は、埼玉県桶川市大字倉田に位置する真言宗智山派の寺院です。この寺院は、室町時代の初期に隆尊によって開かれ、当初は五大山興願寺と称されていました。本尊として虚空蔵菩薩を祀り、真言宗関東十一談林の一つとして、その名が知られています。

寺院の名前の由来となった「明星の井戸」は、古くから地域の人々に語り継がれる伝説があります。明け方の空に天女が現れ、その手から伸びた糸が井戸まで続いていたという神秘的な光景が目撃されたと伝えられています。また、井戸から明星が飛び出したという言い伝えも残されており、この井戸が特別な場所であることを物語っています。

歴史を紐解くと、明星院は倉田村を寺領としていました。戦国時代から江戸時代にかけて活躍した太田氏、北条氏、徳川氏に関する貴重な古文書が今もなお保存されています。特に、1591年には徳川家康から朱印地10石が寄進されたことは、寺院の歴史において重要な出来事です。さらに、伊奈忠次が小室に陣屋を置く際、無量寺閼伽井坊を明星院に移転させ、付近の田3町歩を寺領として与えたという記録も残っており、当時の社会情勢と寺院の関わりを窺い知ることができます。

境内の奥には、高さ約31メートル、推定樹齢600年という巨大なカヤの木がそびえ立っています。この「倉田の大カヤ」は、埼玉県指定の天然記念物にもなっており、隆尊が修行中に挿し木したものであると伝えられています。その圧倒的な存在感は、訪れる人々に深い印象を与えます。

寺院には、徳川家康の朱印状や、金蒔絵行厨、金屏風などの文化財も所蔵されています。これらの貴重な品々は、寺院の歴史と文化を物語る重要な証拠となっています。

交通アクセスとしては、JR高崎線桶川駅から桶川市内循環バス「べにばなGO」に乗車し、「東38 明星院前」バス停で下車すると便利です。また、伊奈町循環バス「いなまる」を利用する際は「新宿新田」バス停から徒歩5分、埼玉新都市交通伊奈線（ニューシャトル）内宿駅からは徒歩15分で到着します。

参考文献として、「新編武蔵風土記稿」や桶川市ホームページに掲載されている情報が挙げられます。これらの資料からも、明星院の歴史や文化、そして自然環境について、より深く理解することができます。

明星院は、歴史、文化、そして自然が調和した、訪れる人々にとって魅力的な場所です。その静寂な空間で、歴史の息吹を感じながら、心静かに過ごしてみてはいかがでしょうか。

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