星岳雄

星岳雄（ほし たけお）

日本の経済学者として、日本経済論、特に金融システム分野の研究において国際的な第一人者として知られる人物です。現在、東京大学大学院経済学研究科で教鞭を執る傍ら、経済産業研究所の研究員も務めています。これまでにアメリカ合衆国の主要大学で長年にわたり研究・教育活動を展開し、その功績は日本経済学会中原賞をはじめとする数々の栄誉によって称えられています。

生い立ちと学歴

星岳雄は1960年に山形県南陽市に生まれました。地元の山形県立米沢興譲館高等学校を経て、1983年に東京大学教養学部を卒業し、教養学士の学位を取得しました。大学卒業後、さらなる知見を求め渡米し、世界的に権威のあるマサチューセッツ工科大学（MIT）大学院の博士課程に進学。経済学を深く学び、1988年に同課程を修了し、経済学博士号（Ph.D. in Economics）を取得しました。

研究者・教育者としての歩み

博士号取得後、星岳雄の研究者としてのキャリアはアメリカ合衆国で本格的にスタートします。1988年からカリフォルニア大学サンディエゴ校（UCSD）で助教授として教壇に立ち始め、その後、准教授、そして教授へと昇進し、2012年まで同大学に在籍しました。この間、2006年から2009年には、UCSDの国際関係論・環太平洋研究大学院で院長代理を務めるなど、大学運営にも貢献しました。

2012年からは、スタンフォード大学のFreeman Spogli Instituteのシニアフェローとして活動の場を移し、2019年8月まで在籍しました。アメリカでの長期にわたる教育・研究活動を通じて、国際的な視点から日本経済を分析する独自のスタンスを確立しました。

一方で、日本の研究機関との連携も積極的に行っています。1997年から1998年にかけて大阪大学経済学部の客員助教授を務めたほか、1998年には日本銀行金融研究所の客員研究員、2002年から2004年には経済産業研究所（RIETI）のファカルティフェロー、2006年からは東京経済研究センターの研究員としても活動しています。また、2003年からは全米経済研究所（NBER）のリサーチアソシエイトとして、世界各国の経済学者との共同研究にも携わっています。

社会活動

研究・教育活動に加え、様々な社会的な役割も担ってきました。2009年から2014年にはユニオンバンカル（現在のユニオン・バンク）の社外取締役を務め、金融実務の世界にも関与しました。また、2016年から2018年には、公益財団法人東京財団政策研究所（当時は東京財団）の理事長として組織の運営を指揮し、その在任期間中に「東京財団政策研究所」への組織改編を実現しました。

そして2019年9月からは、母校である東京大学に戻り、大学院経済学研究科の教授として、次世代の経済学者育成に力を注いでいます。

主な研究業績と評価

星岳雄の研究の中心は、日本経済、とりわけ金融システム、企業のコーポレートガバナンス、そして銀行行動の分析にあります。これらの分野における彼の研究は、精緻な実証分析に基づき、日本経済が抱える構造的な課題を明らかにし、国内外の経済学界から極めて高い評価を得ています。

その貢献は数々の受賞によって裏付けられています。2005年度には、優れた研究業績を挙げた若手・中堅経済学者に贈られる日本経済学会中原賞を受賞しました。また、共著書である『日本金融システム進化論』は、2006年に第45回日経経済図書文化賞を受賞するなど、アカデミックな評価のみならず、広く経済界や一般読者からも注目されています。

主な著作

星岳雄は精力的に研究成果を発表しており、特に共著書として以下のものが挙げられます。

『日本金融システムの危機と変貌』（星岳雄編、ヒュー・パトリック編、筒井義郎監訳、日本経済新聞出版社、2001年）
『日本金融システム進化論』（星岳雄、アニル・カシャップ共著、鯉渕賢訳、日本経済新聞出版社、2006年）- 第45回日経経済図書文化賞受賞作
* 『何が日本の経済成長を止めたのか 再生のための処方箋』（星岳雄、アニル・カシャップ共著、日本経済新聞出版社、2013年）

これらの著作は、いずれも日本経済の構造問題、特に金融セクターの課題を深く掘り下げたものであり、多くの研究者や政策担当者に影響を与えています。

長年にわたりアメリカで研究者としてのキャリアを積み、国際的な視点から日本経済を分析してきた星岳雄の知見は、今後の日本経済の再生と発展を考える上で極めて重要であり、東京大学教授として、その知見を後進の指導や研究活動を通じて社会に還元し続けています。

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