星空の音楽会

トムとジェリー：星空の音楽会

1950年公開の『トムとジェリー』シリーズ作品『星空の音楽会』（原題：Tom and Jerry in the Hollywood Bowl）は、ハリウッド・ボウルの野外コンサートを舞台にした、軽妙洒脱なドタバタ劇です。監督はウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ、製作はフレッド・クインビーという、シリーズを代表するスタッフ陣が制作に携わっています。

物語の中心は、ヨハン・シュトラウス2世作曲の『こうもり』序曲を指揮するトムと、その指揮者席を乗っ取ろうとするジェリーの対決です。トムは真剣に指揮棒を振るい、オーケストラ（猫の楽団員たち）を統率しようとしますが、ジェリーはいたずら好きの本性を発揮し、トムを邪魔し続けます。

ジェリーは、様々ないたずらでトムを翻弄し、指揮を妨害します。トムはジェリーを追い払おうとしますが、しつこくつきまとうジェリーに手を焼きます。クライマックスでは、ジェリーが舞台下の床をノコギリで切り抜き、次々と楽団員を落とし込むという大胆な行動に出ます。

楽団員が次々と消えていく事態に、トムはついに一人残され、オーケストラの全パートを一人で演奏するという離れ業を強いられます。全ての楽器を同時に演奏するトムの姿は、まさに人間離れした技術と、必死の努力の結晶です。その間も、ジェリーは指揮台に座り、ちゃっかりと指揮者の座を奪ってしまいます。

演奏が終わると、トムはジェリーに続いて観客に深々と頭を下げますが、そのまま舞台下の穴に吸い込まれてしまいます。ジェリーは拍手喝采を浴びながら、トムの苦労をまるで無視したかのような態度で舞台に残ります。この、トムの頑張りに対し無関心なジェリーの姿が、物語の皮肉なユーモアを際立たせています。

本作の特徴は、クラシック音楽を題材にしている点です。華やかな『こうもり』序曲が、トムとジェリーの騒動をさらに盛り上げます。また、アニメーション特有の誇張された動きや、コミカルな表現がふんだんに用いられ、老若男女問わず楽しめる作品となっています。

登場キャラクターは、トムとジェリーに加え、トムと瓜二つの薄茶色のネコたちがオーケストラ団員として登場します。彼らは、ジェリーのいたずらによって次々とステージ下に消えていきますが、その姿は、トムとジェリーの騒動をより一層滑稽に演出する効果を生み出しています。

日本では、1964年から1990年頃までTBS系列を中心にテレビ放送され、世代を超えて愛されてきました。この作品は、トムとジェリーシリーズの中でも特に人気のある作品の一つであり、そのコミカルな演出と、音楽とアニメーションの融合は見事なものです。

『星空の音楽会』は、単純な追いかけっこだけでなく、音楽とユーモアの絶妙なバランスで、観客を惹きつけてやまない魅力的な作品です。ハリウッド・ボウルという豪華な舞台設定も、作品の魅力を高めています。また、制作スタッフの卓越した技術も、作品全体のクオリティを支えていると言えるでしょう。

もう一度検索