春日神社 (大阪市福島区)

春日神社：歴史と自然が織りなす名所

大阪市福島区に位置する春日神社は、古くから「藤之宮」として親しまれてきた神社です。その歴史は古く、藤原氏の祖神を祀る由緒ある社として知られています。

由緒ある神社と藤の深い繋がり

江戸時代の文献『摂津名所図会』や『藤伝記』には、春日神社が野田村の林中にあり、藤を因にして藤原氏の祖神を祀るようになったと記されています。野田村の庄屋である藤家の氏神として、大切に祭られてきたことがわかります。

特に、神社周辺に自生する野田藤は、植物学者牧野富太郎によって命名されたとされ、世間では「野田藤発祥の地」とも呼ばれています。ただし、人工種でない野田藤の正確な発祥地を特定することは困難です。

室町時代には、足利義詮が住吉詣の途中にこの地を訪れ、藤の美しい景色を鑑賞したと伝えられています。その際に詠まれたとされる歌が『野田の藤跡碑』に刻まれています。「むらさきの雲とやいはむ藤の花　野にも山にもはいぞかかれる」という歌は、当時の藤の壮大さを物語っています。また、「いにしえの ゆかりを今も 紫の ふし浪かかる 野田の玉川」という歌も伝えられています。

玉川の藤は、「吉野の桜、野田の藤」と並び称されるほどに名高く、豊臣秀吉も1594年にこの地を訪れ、藤を愛で、休息したと伝えられています。秀吉が茶店「藤亭」で彫らせたという額「藤庵」は、現在も藤家に伝わっています。この藤庵の庭は、現在は下福島公園内に移設復元され、当時の面影を偲ぶことができます。

江戸時代には、多くの茶店が軒を連ね、賑わった様子が『摂津名所図会』に描かれています。しかし、明治以降の都市化、第二次世界大戦、阪神高速3号神戸線建設などの影響により、野田藤は壊滅的な被害を受けました。

近年では、地域住民の尽力により、残された古木の種子から苗を育成するなど、かつての野田藤の名所復活に向けた取り組みが続けられています。

アクセス

春日神社へのアクセスは良好です。

大阪メトロ千日前線 玉川駅より徒歩約5分（約500m）
JR大阪環状線 野田駅より徒歩約9分（約700m）
なにわ筋側からは、玉川南公園の中を通り抜けて神社の横に出ることが可能です。

関連情報

下福島公園（藤庵の庭が復元されています）
福島区役所（名所旧跡情報）
大阪日日新聞（「市営地下鉄千日前線 玉川駅 藤の花影と川の香りと」の記事）

春日神社は、歴史と自然が深く結びついた、魅力あふれる場所です。訪れた際には、悠久の歴史と美しい藤の花、そして地域の人々の努力を感じることができるでしょう。

もう一度検索