春鶯囀

春鶯囀（しゅんのうでん）についての詳細

春鶯囀（しゅんのうでん）は、雅楽の中でも特に知られる唐楽の曲名の一つであり、別名として天長宝寿楽や和風長寿楽、梅苑春鶯囀などがあります。この曲は、壱越調で演奏される場合が多く、四箇之大曲（しかのたいきょく）の一つとして位置づけられています。

この楽曲の起源には様々な伝説が残されており、一部では唐の高宗が合管青に作曲を依頼したとも言われています。また、高宗自身が実際に鶯の美しいさえずりを聞いて、楽師にこの曲を作らせたとの伝承もあります。曲自体には鶯のさえずりを模した旋律が用いられ、春の訪れや生命の息吹を感じさせる内容となっています。

構成

春鶯囀は、全体で6つの楽章から構成されており、各楽章には特有の名前が付けられています。その構成は以下の通りです：

1. 遊声（ゆうせい）
2. 序（じょ）
3. 颯踏（さっとう）
4. 入破（じゅは）
5. 鳥声（てっしょう）
6. 急声（きっしょう）

この作品を全曲通して演奏するためには、およそ2時間が必要とされています。特筆すべきは、1967年に国立劇場にて行われた第2回雅楽公演において、宮内庁楽部によって明治以降初めて行われた舞楽としての全曲演奏がある点です。この演奏において、舞人は通常6人または4人が参加し、繊細な舞を披露します。

特に、颯踏と入破の楽章は管絃楽としても演奏されることがあり、その一部は渡物として双調の形で存在します。これは春鶯囀の多様性を示唆しており、単なる舞楽の枠を超えた多彩な表現が可能であることを意味しています。

朝鮮の「春鶯囀」

興味深いことに、朝鮮にも同名の曲が存在します。この曲は漢字で表記され、ハングルでは「춘앵전（チュネンジョン）」として知られていますが、日本の春鶯囀とは全く異なる音楽スタイルと舞の形を持っています。この曲は主に一人で舞う形式であり、そのため日本のものとは異なった独自の表現が展開されます。

春鶯囀は、音楽と舞が織り成す豊かさを感じさせる作品であり、雅楽の中でも特にその名が知られる理由は、鶯のさえずりをテーマにしたそのメロディーの美しさにあります。文化の壁を越えて、春鶯囀は地域ごとに異なる色合いを持ちながら、同時に多くの人々に愛され続けています。

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