昭和任侠伝

昭和任侠伝の魅力

『昭和任侠伝』は、落語の新作として位置付けられ、特に昭和の任侠映画を面白おかしく描いた作品です。この演目は、1970年代初頭に桂音也によって創作されました。映画自体は当時人気を博していた高倉健や鶴田浩二、藤純子（現在の富司純子）らが主演した東映の任侠映画を基にしたパロディが豊富に含まれています。この作品は、2代目桂春蝶の得意なネタとして知られ、彼の死後も弟子や息子たちによって引き継がれています。

あらすじの概要

物語は、任侠道に憧れる一人の男性が主人公です。彼は安価な着物に雪駄を履き、街中を徘徊しながら日常を過ごしています。任侠映画を見ては、「健さん、かっこいいなぁ」と自らに酔いしれる姿が見受けられます。自宅に戻ると、母親に挨拶し、妹の名前を間違えてしまうなど、おっちょこちょいな一面を見せます。

ある日、彼が風呂屋へ向かう途中で女性から声をかけられ、「流れ者には近寄っちゃだめだ」と大見栄を切りますが、実際には手ぬぐいを落としただけというお粗末な状況に直面します。自尊心を傷つけられながらも、風呂屋で見た客の刺青に感激し、刺青彫り師の元へ向かいますが、痛みに耐えられずに泣き、結局は追い出されてしまいます。

男は自身が本物の任侠になることを渇望しているものの、ことごとく計画は裏目に出ます。彼はバナナ一つで罪を犯そうとするが、店主は彼が八百屋の息子であることを知っており、理解を示しません。さらに、交番に連れて行かれるものの、警官も彼を真剣に受け止めることなく、「職安へ行け」と冷たくあしらいます。

このように、男は理想と現実の間で葛藤し続け、家に帰ると、「おっ母さん、真っ暗闇の中にいる」と嘆きますが、実際には停電のせいで周囲が見えないことを母親に指摘され、一層滑稽な結果に。

バリエーション

この演目は、3代目桂春蝶によっても演じられており、彼は警官を『ミナミの帝王』シリーズの竹内力に憧れるキャラクターとして描いています。このように、各演者の解釈によって様々なバリエーションが楽しめるのも『昭和任侠伝』の魅力の一つです。

まとめ

『昭和任侠伝』は、任侠道に憧れる男性の滑稽な日常を通じて、理想と現実のギャップをユーモアたっぷりに描いた作品です。観客は、彼の失敗やおっちょこちょいな行動を通じて笑いと共感を得られるでしょう。日常の中での人間ドラマを丁寧に描き、鑑賞後にはほっこりとした気持ちが残る、そんな魅力的な落語の一つです。

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