昭和四十六年 大久保清の犯罪

昭和四十六年 大久保清の犯罪

『昭和四十六年 大久保清の犯罪』は、1983年8月29日にTBS系列で放送された単発テレビドラマです。この作品は「戦後最大の連続女性誘拐殺人事件」をテーマにし、群馬県で実際に起こった悲劇的な事件を描いています。

背景と制作経緯

1970年代後半から1980年代には、様々な実録ドラマが制作されており、その中には土曜ワイド劇場の『戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件』（1979年）やTBSの実録ドラマシリーズが含まれています。本作は、そのような流れの中で実績を持つ筑波昭の著書『昭和四十六年、群馬の春 大久保清の犯罪』を原作にしており、大久保清がどのようにして8人もの女性をターゲットにしたのか、その邪悪な半生を追います。

制作発表会が1983年4月11日に予定されていたものの、遺族や被害者からの抗議により中止となったことも、この作品が抱えるセンシティブな問題を物語っています。しかし、この作品は後に実録ドラマシリーズの中でも重要な位置付けを持つこととなりました。

ストーリーの深層

大久保清は、自己を芸術家としての存在と感じ、白い高級車を乗り回しながら若い女性を手当たり次第に誘惑しました。彼は強姦し、冷酷に彼女たちを殺害するという凶行に及びます。この背後には、彼の家族関係や精神的な葛藤が根深く絡んでいることが脚本を通して描かれました。

脚本家の池端俊策は、作品を通じて大久保の精神的な分裂や家族の影響を探求し、その結果、視聴者に人間の闇や歪みを鋭く伝えています。このような視点は、視聴者にとって衝撃的かつ深い理解を促します。

キャストと制作陣

主演の大久保清を演じたのは、当時人気絶頂のお笑い芸人・ビートたけしです。この役には特別な意図があり、制作チームは彼の独特な存在感を利用して視聴者の心に訴える力を強めようとしました。

他の主要キャストには、清の妻役の木内みどりや、母役の大塚道子、さらには様々な被害者の役を演じた女優たちが含まれており、それぞれが物語に深く関与する形で緊迫感を醸成しています。

プロデューサーは八木康夫で、本作でデビューを果たしました。彼はたけしの魅力に惹かれ、その採用を決定したと言われています。

メディア展開と反響

作品は放送後、ジャパンホームビデオからVHSとして販売され、その後はTBSチャンネルやBS-TBSで再放送されるなど、根強い人気を誇ります。視聴者からの評価も高く、実録ドラマとしての位置付けを確立しました。

また、本作制作時期に新大久保清というお笑いタレントがたけし軍団に在籍しており、彼の芸名はたけしの思いつきで決められたことも興味深いエピソードと言えるでしょう。

『昭和四十六年 大久保清の犯罪』は、ただの犯罪ドラマではなく、深い人間ドラマと社会的な考察が融合した、見る者に強いメッセージを伝える作品として今でも語り継がれています。

もう一度検索