時の終わりの劇

カール・オルフ：時の終わりの劇 ―終末を描いた壮大な音楽劇―

カール・オルフ晩年の代表作『時の終わりの劇』（De temporum fine comoedia）は、1960年から1971年にかけて作曲された大規模な声楽曲です。彼の「終末劇」と呼ばれるシリーズの最終作品であり、古代ギリシャ劇を題材とした初期の作品群から発展した集大成と言えるでしょう。

この作品は、世界終末という壮大なテーマを、古代ローマや初期キリスト教、オルフェウス教といった様々な文化圏のテキストを引用することで表現しています。オーケストレーションは、打[[楽器]]が中心的な役割を担い、日本の寺院の鐘などの異国情緒あふれる楽器も用いられています。これらの楽器は、オルフが自身の別荘に収集したもので、独特の響きを作り出しています。また、弦楽器は控えめな役割を担いますが、第3部ではヴィオーレ四重奏がJ.S.バッハのコラール「汝の御座の前に今ぞ進み出で」の旋律を奏でる場面があり、中世のオルガヌムを思わせる荘厳な響きが聴衆を圧倒します。

初演は1973年、ザルツブルク音楽祭にて、ヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮によって行われました。その後、1979年のミュンヘン公演を機に、スコアとテキストに修正が加えられています。演出はアウグスト・エヴァーディング、舞台デザインはギュンター・シュナイダー＝ジームセンが担当しました。

演奏には、大編成のオーケストラと複数の合唱団が参加します。管楽器はフルート、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバなど多岐に渡り、打[[楽器]]奏者は10名にも及びます。さらに、ハープ、チェレスタ、ピアノ、電子オルガン、教会オルガンなど、多様な楽器が用いられています。当初のスコアには、さらに多くのピッコロやトランペット、トロンボーンなどが含まれていましたが、演奏上の都合から簡略化された部分もあるようです。興味深いのは、予算削減のため、一部楽器の音源を事前に録音したテープを使用し、アドリブ演奏も取り入れている点です。

全3部構成から成るこの作品は、第1部と第2部では、シビュラや隠者といった人物を通して世界の終末を予言する悲観的な情景が描かれています。特に第1部では、シビュラによる神託に基づき、悪魔の永遠の罰や世界の終末が力強く表現されます。一方、第3部では、器楽のみによる演奏で宇宙の霊化という概念が中心に据えられ、第1部、第2部とは対照的な静謐な雰囲気が漂います。グレゴリオ聖歌を思わせる「ディエス・イレ（怒りの日）」の旋律も使用され、終末のイメージをより鮮やかに浮き彫りにしています。

約60分の演奏時間は、壮大なスケールと緻密な構成が凝縮された、聴く者を圧倒する音楽体験を提供します。オルフの音楽世界を深く理解する上で欠かせない、重要な作品と言えるでしょう。

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