時報

時報の概要

時報（じほう）とは、音、光、文字などを利用して定期的に発信される時間を知らせる信号のことを指します。時計が主流でない時代や地域では、人々に時間を意識させる重要な手段でした。また、現代においては、各種媒体を通じて公衆に正しい標準時を伝え、各自の時計を適切に調整させる役割を果たしています。

欧米における時報

近代以前

中世のヨーロッパでは、多くの都市に時計塔が設置され、機械時計による鐘の音で時刻を知らせていました。19世紀になると、グリニッジ天文台からグリニッジ平均時に基づいた時報が発信され、特に鉄道や郵便局がそのサービスを利用しました。

近代以後の時報

報時球は1833年にイギリスのグリニッジ天文台で初めて導入され、正午に船舶のために赤い木製の球体が落下して時刻を知らせる仕組みです。それは鐘や太鼓よりも広範囲に、また音よりも早く時を伝えるという特長がありました。1852年には電信が時報に応用され、グリニッジから制御された報時球がストランドに設置されましたが、正確な時刻を知らせることができず、短期間で使用が中止されました。しかし1856年からは電信による時報が実用化され、多くの交通機関や郵便局で受信されるようになりました。

報時砲も1862年からイギリスで利用され、大砲の発砲による音で時刻を知らせる方法が採用されました。さらに電信を通じて時刻情報が配信され、各駅や郵便局でも利用されるようになったことで、一般市民が正確な時刻を知ることが可能になりました。

日本における時報

日本の時報の歴史は671年に遡ります。天智天皇は「漏刻」と呼ばれる水時計を用いて、鐘や太鼓で時間を知らせていました。その後、仏教寺院が鐘を鳴らすことで時間を告知し、江戸時代には各地に寺鐘制度が導入され、周囲の寺社が連携して時刻を知らせる仕組みが構築されていきました。また、江戸時代の城下町では城の太鼓も時刻を知らせる手段として使用されました。

1871年からは西洋式の時報法が日本に取り入れられ、午後12時に大砲を用いた報時砲が採用され、1902年には主要港で報時球が設置されました。報時球は正午の時刻を正確に知らせる手段として機能し、特定の信号を基に時刻を発信しました。さらに1888年からは電信による時報も始まり、全国の郵便局や交通機関において正確な時刻の供給が行われました。

近代には無線通信も導入され、1912年からは銚子無線電信局からの電波による時報が始まりました。正午や夜9時に定時に放送されるこの時報は、電波時計や関連する機器により、正確な時刻情報を提供しました。

さらに、屋外スピーカーや防災行政無線を利用した時報も各地で導入され、自治体によって音楽やサイレンで時刻を知らせる取り組みが行われています。特定の時間に決まった音楽やアナウンスが流れることで、住民は日常的に時刻を意識することができます。

まとめ

時報は、歴史的背景を持ちながら、現在でも多くの方法で私たちの日常生活に溶け込んでいます。時刻を知らせるこのシステムは、社会の基礎を成す重要な要素であり、文化や地域によって変化しつつも、正確な時間の意識を促す役割を果たしています。

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