時間の習俗

時間の習俗

『時間の習俗』は、松本清張による長編推理小説で、1961年から1962年にかけて雑誌『旅』に連載され、1962年に光文社より刊行されました。この作品では、『点と線』に登場した三原警部補と鳥飼刑事が再び活躍し、複雑に絡み合った事件の真相を解き明かします。物語の舞台は、関門海峡に面した門司市の和布刈神社で、神社の伝統行事である「和布刈神事」が開催される際、怪事件が発生します。

あらすじ

物語は旧暦元旦の未明、和布刈神社で行われる「和布刈神事」を見たいと多くのカメラマンが集まる中、神奈川県の相模湖近くにて、交通関係の雑誌の編集人・土肥武夫が死亡した遺体が発見されることで始まります。土肥は宿泊先の女中が証言する通り、同行していた女性がいましたが、その女性は行方不明となっています。

警察は捜査を進める中で、有力な容疑者が出てこないことに困惑します。三原警部補は、土肥の交友関係を調査し、タクシー会社の専務・峰岡周一に目をつけます。しかし、峰岡は完璧なアリバイを主張し、捜査は難航します。そこから、さまざまな人物が登場し、物語が複雑に展開していきます。

登場人物

• - 三原紀一: 警視庁捜査一課の警部補で、『点と線』からの続投キャラクター。
• - 鳥飼重太郎: 福岡県警の古参刑事で、三原とのコンビが再び描かれる。
• - 峰岡周一: 大手タクシー会社の専務であり、事件のカギを握る。
• - 土肥武夫: 事件の被害者で、交通文化情報の編集人。
• - 江藤順平: 表具師かつ俳句誌の主宰者。
• - 須貝新太郎: 名古屋のゲイバー勤務の男性。
• - 梶原武雄: アマチュアカメラマン兼工員。

製作背景

この小説は、当時の編集長からの提案を受けて執筆されたもので、社会情勢を反映した内容となっています。松本清張は同じキャラクターを使うことを好まなかったと語りつつも、読者に馴染みのある人物を再登場させる必要を感じていました。また、物語に取り入れられた和布刈神社の古い習俗は、著者の俳句友人からの情報をもとにしたもので、歴史的な要素が色濃く反映されています。

連載時にはタイトルが『時間の配色』だったこともあり、変更が行われた経緯も興味深いポイントです。また、作中に登場する宿のモデルについても推測がなされており、地域と文化が密接に絡んでいることが明らかです。

テレビドラマ化

本作は、1963年、1982年、2014年の3度にわたりテレビドラマ化され、各時代ごとに異なるキャストとスタッフが参加しました。特に1982年版では視聴率が21.1％を記録し、広く視聴されました。各バージョンにおいて作品の持つミステリー性や登場人物の関係性がどのように表現されたのか、視聴者にとっての魅力となっています。

総括

『時間の習俗』は、松本清張のスリリングな推理が展開される名作であり、古き良き日本の文化と、現代社会との接点を探る作品でもあります。サスペンスと人間ドラマが見事に融合し、従来のミステリーとは一線を画す魅力を持っています。

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