景浦安武

景浦安武：酒豪強打者から国民的英雄へ

景浦安武は、水島新司の野球漫画『あぶさん』の主人公であり、架空のプロ野球選手にして指導者です。現実世界のプロ野球選手、景浦将、藤村富美男、土井正博、永淵洋三らをモデルに、酒豪で長打力抜群の強打者として描かれています。南海ホークス一筋で37年間活躍し、球界最年長選手として数々の伝説を残しました。背番号90は、現実の南海ホークスでも球団の配慮により準永久欠番として扱われていました。主に外野手として活躍しましたが、三塁手としてレギュラー出場した時期もありました。シーズンによっては打撃コーチも兼任していました。

波乱万丈の経歴

1946年12月17日生まれ。11歳の時、草野球チームの代打として初体験。三振に終わるも、野球の魅力に開眼し、母からバットとグローブを贈られ本格的に野球を始めます。北明高校時代には、甲子園予選で二日酔いながらサヨナラ本塁打を放つも、飲酒が発覚し、出場停止処分、そして退学処分となります。

高校退学後は社会人野球でプレーしますが、監督との不仲で退部を繰り返します。1972年、酒のトラブルで懲戒免職となった後、恩師の岩田鉄五郎の紹介で、南海ホークスにドラフト外で入団します。

南海ホークス時代：代打の切り札からスターへ

南海入団後も、遅刻や飲酒などトラブルは絶えませんでした。しかし、長打力とインコース打ちへの強さを買われ、徐々に頭角を現していきます。藤村富美男との出会い、長尺バット「物干し竿」の使用をきっかけに打撃が開眼。豪快な打撃スタイルと、酒を飲む姿は彼のトレードマークとなります。代打の切り札として活躍する一方、集中力やスタミナ、守備力に課題を抱えながらも、持ち前の長打力でチームに貢献します。度重なるトラブルや、審判への抗議による退場処分などもありながらも、代打として活躍します。1979年には4打席連続本塁打というプロ野球タイ記録を達成します。

1980年、桂木サチ子と結婚。1981年には長男・景虎が誕生。その後も代打専門として活躍し、1980年には大島康徳のシーズン代打本塁打記録を更新しました。1982年には落合博満と本塁打王を争うなど、活躍は続きます。1983年には自由契約となるも、南海ホークスのテストに合格し再入団。その後レギュラーに定着し、1986年には落合博満と本塁打王を分け合う活躍をします。

福岡ダイエーホークス時代：三冠王への道

球団の福岡移転後も現役を続行。弱小チームの精神的支柱として、田淵幸一、根本陸夫両監督を支えます。1991年から1993年まで3年連続三冠王を獲得するなど、驚異的な成績を残します。1994年には王貞治のシーズン最多本塁打記録を更新する56本塁打を放ちます。1996年には椎間板ヘルニアを発症し長期離脱しますが、復活を果たします。1998年には三塁手、1999年には右翼手として出場機会が増えます。

ソフトバンクホークス時代：選手兼任監督から引退へ

2000年には3000試合出場を達成。2006年には王貞治監督の代理として選手兼任監督を務め、東京ヤクルトスワローズの古田敦也監督とのプレイングマネージャー対決を実現します。王監督の病気療養時には選手兼ヘッドコーチ、森脇浩司監督代行の休養時には選手兼任監督を務めました。2007年には打率4割を達成するという目標を掲げ、最終戦でサヨナラヒットを放ち、目標を達成します。

2008年シーズンは代打に専念することを発表しますが、王貞治監督の慰留により2009年も現役を続行。同年、息子・景虎がソフトバンクに入団し、「父子鷹」が誕生しました。2009年シーズンをもって現役を引退。最後の打席はサヨナラ本塁打となりました。

引退後

引退後は大阪に戻り、ソフトバンクの二軍、一軍助監督を務めた後、2014年に球界を引退します。

人物像

景浦安武は、酒豪で豪快なプレイスタイルとは裏腹に、温厚で義侠心あふれる人物像として描かれています。困っている人を放っておけない優しさや、後輩への面倒見の良さ、プロ意識の高さを持ち合わせています。一方で、人前で話すことは苦手とされ、CM出演やテレビ出演経験は少ないものの、数々のエピソードを残しています。

野球選手としての特徴

長年にわたるプロ生活の中で、数々の記録と実績を残しました。契約更改はいつも一発で、金額も見ずにハンコを押すほど、金銭には無頓着です。若い頃は酒癖が悪く、1打席しか集中力が持たないと評されていましたが、年齢を重ねるごとに練習態度も真面目になり、高いプロ意識を示すようになりました。得意はインコース全般。トレードマークである「酒しぶき」を豪快に振りかざし、長尺バット「物干し竿」を巧みに操る豪打で多くのファンを魅了しました。守備は外野手として活躍する一方、内野手や捕手、さらには投手としてマウンドに立った経験もあります。

指導者としての才能

現役時代から打撃コーチを務めるなど、指導者としての才能も発揮していました。選手に積極的に技術を教えるタイプではありませんでしたが、選手の質問には丁寧に答え、自主性を尊重する指導スタイルを貫きました。ソフトバンク時代には選手兼任監督、ヘッドコーチを経験し、引退後は二軍、一軍助監督を務め、王貞治監督からもその指導力が高く評価されていました。

交友関係

家族や友人、そして多くの野球関係者との深い絆で結ばれていました。チームメイト、同時代の選手、そして監督やコーチとの交流は作品の中で繰り返し描かれています。特に「大虎」という居酒屋は、景浦の人間関係の中心的な場所として重要な役割を果たしています。

主な記録

三冠王3回
首位打者4回
本塁打王6回
打点王4回
シーズン打率.401
シーズン56本塁打
4打席連続本塁打3回
代打本塁打通算世界記録
年間代打本塁打記録
オールスターMVP3回
サイクルヒット
通算3000試合出場

景浦安武は、数々の記録やエピソード、そして人柄を通じて、多くの読者から愛され続ける、まさに国民的野球漫画の主人公と言えるでしょう。

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