智子の心

智子の心

『智子の心』（繁体字中国語:智子之心）は、2018年に台湾で放映されたテレビドラマです。この作品は、第二次世界大戦中の従軍看護師の実話に基づき、日本統治時代の台湾・台南で裕福な家庭に生まれた林志慧（作中名：智子）という少女の波乱に満ちた人生を描いています。

主人公である林志慧は、家族からの強い反対を受けながらも、18歳という若さで陸軍の従軍看護婦となる道を選びました。彼女は日本軍に帯同し、香港や広州といった各地を転戦しながら、日本兵の救護活動に従事しました。戦後長い時を経て、91歳となった林志慧は記者会見の場に立ち、自身の苛烈な時代体験を語りました。ドラマは、その語りや実話から着想を得て制作されています。

このドラマでは、廖苡喬と游蕎軒が主演を務めました。制作は、台湾の南方影視製作有限公司によって手掛けられています。

作品の舞台が台湾の日本統治時代であり、特に第二次世界大戦中であること、また主人公が日中戦争において日本軍の野戦看護師として活動することに焦点を当てていることなどから、その内容を巡って一部で論争が巻き起こりました。特に、ドラマが日本軍を肯定的に描いている、あるいは国軍を敵役として扱っているといった見方が示されたことから、中国のメディアからは強い批判を受けました。侵攻してきた日本軍を美化し、日本に迎合しているといった厳しい評価がなされました。

ドラマがインターネット上で公開されると、特に林志慧の日本への奉仕活動を描いた予告編のエピソードが、中国本土で激しい反発を引き起こしました。中国の新聞「環球時報」は、このドラマが日本の軍国主義を賛美していると非難し、中華人民共和国国務院台湾事務弁公室も懸念を表明するなど、政治的な動きにも発展しました。

『智子の心』シリーズは、2018年5月10日に初回放送を迎えました。しかし、わずか2話が放送された後の5月12日には、制作・放送局である大愛台が「看護師の日」を名目とした別の特別番組「愛の別れ」に放送内容を変更し、さらに5月14日からは別の連続テレビドラマ「君がそばにいるから」の放送に切り替えられました。これは事実上の放送中止措置と見なされました。

大愛台は、この件に関連し、Facebookへの投稿、YouTubeでの番組予告、テレビでの放送予告など、『智子の心』に関するあらゆる情報を削除するという対応をとりました。そして、台湾の主要メディアである蘋果日報は、この番組が外部からの圧力によって放送中止に追い込まれたことを報じました。

放送中止の理由について、大愛台側は、番組が自分たちの放送基準を満たしているかどうかの問題であり、映像の一部が誤解や論争を招いた可能性はあるものの、それは意図したものではないと説明しました。また、中国からの批判を受けての自己検閲ではないと強調しました。

一方、台湾政府の大陸委員会は、映画やテレビ番組、その他の文化的・芸術的な創作物に対しては、合理的で平和的な態度で接するよう社会に促しました。また、一部の映画監督からは、大愛台がクリエイティブな作品を尊重せず、中国からの批判に簡単に晒されたことへの批判が上がりました。同時に、インターネット上では「操作の背後にいる人々はさらに憎悪に満ちている」といった、より深い陰謀を示唆する声も聞かれました。台湾の通信行政を管轄する中華民国国家通訊伝播委員会（NCC）は、予告なしの放送停止が視聴者の権利を侵害しているとして、大愛台の責任者に対して放送中止の具体的な理由を報告するよう求めました。NCCはさらに、今後、放送局の免許更新審査において、外部からの政治的圧力による干渉を排除することが優先事項となることを指摘しました。テレビ業界内からも、視聴率とは無関係な理由でドラマが放送中止になることは、台湾の放送業界において異例であるとの見方が示されています。

『智子の心』を巡る一連の出来事は、歴史認識、表現の自由、そして政治的な圧力といった様々な問題を浮き彫りにし、台湾社会内外で大きな議論を巻き起こしました。

なお、このドラマには、主な役割、副次的役割、ゲスト役といった俳優リスト、TVシリーズ曲、大愛会客室一覧などの情報項目が存在しますが、それらの具体的な内容については、本記事の作成時点では提供されていません。

関連項目としては、台湾人日本兵などが挙げられます。

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