暁の死線

書籍概要

『暁の死線』（あかつきのしせん）は、コーネル・ウールリッチが風変わりなペンネーム、ウィリアム・アイリッシュで1944年に発表したミステリー小説です。この作品は、限られた時間を舞台にした緊迫感溢れる物語で、物語の中心には早朝出発の長距離バスが控えており、特定の時間までにある事件を解決しなければならないという設定があります。そのため、この小説には独特の緊張感が漂っており、読者を最後まで引き込みます。また、ウールリッチは『幻の女』でも同様のスタイルを用いており、この作品は彼の代表作のひとつとされています。

あらすじ

物語はブリッキー（本名ルース・コールマン）という22歳の女性から始まります。彼女は故郷の田舎を離れ、夢を抱いてニューヨークに舞い降りましたが、ダンサーとしての成功はついに実現せず、ダンスホールで男性客の相手をしながら生活しています。午前0時50分、彼女はクラブを閉店し、外に出ると助けてくれた青年、クィン・ウィリアムズに遭遇します。

クィンは、自身の故郷がブリッキーの故郷と同じだと明かし、彼らはすぐに意気投合します。しかし、クィンは失業中で、混乱から富裕層の家に空き巣に入ったことを打ち明けます。ブリッキーは、彼が盗んだお金を戻し、二人で朝6時の始発バスでニューヨークを離れることを提案します。

午前2時、クィンは再度屋敷に忍び込みますが、彼の目の前には何者かに刺殺された屋敷の主、スティーヴン・グレーヴズが横たわっていました。朝を迎えたら、クィンが殺人犯として容疑をかけられる危険があります。果たしてブリッキーは、真犯人を見つけ出し、時間内に逃げ出すことができるのでしょうか。二人は欠けたボタンやブックマッチ、香水の匂いなどの手がかりを元にニューヨークの街を徘徊し、緊迫した状況に挑むこととなります。

主な登場人物

• - ルース・コールマン (ブリッキー): 煉瓦色の髪を持つ22歳の女性で、ダンサーの夢を抱いてニューヨークに来るが、現実は厳しいものです。自己嫌悪と挫折感に悩みつつ、何とか生き延びています。
• - クィン・ウィリアムズ: ブリッキーの同郷であり、今は失業して生活に困窮しています。彼の過去には、決して自分の意思で盗みに入ったわけではありませんが、時に道を外れる人間の心理が描かれています。
• - スティーヴン・グレーヴズ: クィンが空き巣に入った家の主で、独身の富豪。彼の死が物語の大きな転換点となります。

書籍と映画化

この小説は1944年に出版され、1946年には映画化されました。また、日本でもこの作品はテレビドラマとして何度もリメイクされています。そのため、多くの人々に親しまれており、今なお愛され続ける作品となっています。

『暁の死線』は、時間との戦いに挑む主人公たちの姿を通じて、夢や挫折、友情や信頼の大切さを描いた物語です。緊迫したストーリー展開と、巧妙な伏線により、読者を引き込む力を持った名作です。

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