暁橋 (広島市)

暁橋：広島港を見つめる歴史の架け橋

広島市南区に位置する暁橋は、広島湾に架かる道路橋です。この橋は、単なる交通路というだけでなく、広島の歴史、人々の暮らし、そして日本の近代化を象徴する存在でもあります。文部省唱歌『みなと』の舞台となったことからも、その歴史的意義は明らかです。

明治時代の架橋と「めがね橋」

1889年、宇品新開（現在の宇品地区）の造成と宇品港（現在の広島港）の築港により、広島本土と宇品島（現在の元宇品）が陸続きとなりました。しかし、当初は両地を結ぶ道路がなく、船舶は島を迂回せざるを得ませんでした。この不便さを解消するため、地元住民の強い要望により、1893年、暁橋の前身となる橋が架けられました。

この最初の橋は単アーチ橋で、土砂防止のための観音開きの門が設置されていました。この門が開いている様子が眼鏡のように見えたことから、人々はこれを「めがね橋」と呼んで親しみました。この「めがね橋」は、当時の住民にとってかけがえのない生活道路であり、地域の重要なインフラであったと言えるでしょう。

戦時下の改築と暁橋の命名

第二次世界大戦中、陸軍の大型輸送車両の通行を容易にするため、1942年、「めがね橋」は陸軍船舶司令部（通称・暁部隊）によって取り壊され、水路が拡張されました。そして、新たに架けられた橋には、宇品干拓に貢献した千田貞暁の名を取り、「暁橋」と命名されました。この改築は、戦争という時代の流れの中で、橋が社会基盤として果たす役割の大きさを改めて示す出来事でした。

1945年の広島への原子爆弾投下においては、爆心地から約5km離れていたため、暁橋は被害を免れました。戦後、橋梁は改築され、現在の姿となりました。橋のたもとには、架橋の由来を説明する石碑がありますが、これはかつて行方不明になった時期もありました。現在では修復され、元の場所に戻されています。

暁橋と地域社会

暁橋は、単に広島港へのアクセスを確保するだけの橋ではありません。その歴史は、宇品地区の発展、広島港の隆盛、そして地域住民の生活と密接に結びついています。橋の改築の歴史は、時代の変化や社会情勢を反映しており、地域の歴史を語る上で重要な証言となっています。

現在も暁橋は、多くの車両や人々が行き交い、広島の街を支える重要な役割を果たしています。また、その歴史的背景と、文部省唱歌『みなと』との関連性から、広島のランドマークとして、地元住民や観光客に親しまれています。将来に渡り、広島の重要な歴史的遺産として大切に保存・継承していくことが重要です。

参考文献

四国五郎『広島百橋』春陽社出版、1975年

関連項目

日本の離島架橋
工兵橋
江波橋

暁橋の諸元

路線名：広島市道南4区686号線
幅員：13.5m
* 橋種：不明（橋面の目地の状況から、旧橋の隣に新橋を架けた拡幅工事が行われたと推測される）

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