暴行切り裂きジャック

『暴行切り裂きジャック』は、1976年に日活ロマンポルノの一編として公開された長谷部安春監督作品です。本作は、人間の内面に潜む暴力性や倒錯的な欲望に焦点を当て、衝動的な犯行が連続殺人へとエスカレートしていく過程、そしてその中で芽生える歪んだ快楽を描き出しています。公開当時、その衝撃的な内容から話題を呼びました。

あらすじ

物語は雨の夜、主人公の若いカップル、ユリとケンが車に乗り合わせた女性を衝動的に殺害するところから幕を開けます。この凄惨な出来事の後、彼らは共犯者としての恐怖や不安を打ち消すかのように、肉体的な関係を結びます。しかし、この一度の犯行が彼らの関係と心理に決定的な変化をもたらします。二人はその後も性的な行為を重ねますが、以前のような満たされなさを感じ始めます。そして、最初の殺人によって味わった極度の緊張とそこから逃れるために求めた肉体的な慰めが、自分たちの間の性的な行為に一種の倒錯的な刺激、抗いがたい快楽を与えていたことに気づくのです。

この背徳的な発見は、彼らをさらなる深淵へと引きずり込みます。彼らはあの夜の戦慄と歪んだ快感を再び得るため、犠牲者を増やしていくようになります。しかし、この共犯関係にも次第に亀裂が生じます。支配的なユリの態度に反感を抱くようになったケンは、彼女から離れ、単独で犯行を重ねるようになります。ユリはケンの変化に気づき、かつての関係を取り戻そうと彼の後を追います。物語の終盤、ケンがある看護婦宿舎で凄惨な殺戮を行っていた最中、密かに後をつけていたユリが現れ、彼の腕にすがりつこうとします。しかし、殺人の狂気に囚われたケンは、容赦なくユリに凶刃を向け、彼女の命を奪います。こうして、恐怖と快楽によって結びついた二人の関係は、取り返しのつかない破滅を迎えるのです。

作品の特徴

本作は、日活ロマンポルノの枠を超え、人間の内面に潜む暴力性、そして恐怖と快楽が結びつく倒錯的な心理を深く掘り下げています。衝動的な殺人から快楽殺人へと変貌していく主人公たちの姿は、観る者に強い衝撃を与えます。このような、快楽を目的とした殺人というテーマは、後の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』など、他の作品でも描かれています。

キャスト

主要キャストは、ユリを桂たまき、ケンを林ゆたかが演じました。他にも、物語を彩る様々な役柄で、山科ゆり、岡本麗ら、多数の俳優が出演しています。

海外での上映

2016年には、韓国で開催された「ロポクラシック・フィルム・フェスティバル」にて上映されるなど、海外でも日本のジャンル映画として知られる機会がありました。

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