曽我量深

曽我量深（そがりょうじん）

生涯

曽我量深（1875年9月5日 - 1971年6月20日）は、明治から昭和にかけて活躍した真宗大谷派の僧侶であり、仏教思想家です。新潟県に生まれ、当初は富岡姓でしたが、後に曽我家の養子となり曽我姓を名乗りました。真宗大学（現在の大谷大学）で学び、卒業後は同大学の教授や学長を歴任するなど、教育者としても貢献しました。また、真宗大谷派の講師としても活躍し、仏教の教えを広めることに尽力しました。

思想

曽我量深の思想は、伝統的な仏教の解釈を、近代的な視点から捉え直した点が特徴です。特に、浄土真宗の教えを深く探求し、その本質を現代人に分かりやすく伝えようとしました。彼は、仏教の教えを単なる宗教的な教義としてではなく、人間の存在や生き方に関わる普遍的な真理として捉えました。また、仏教と西洋哲学の融合を試みるなど、幅広い視野を持って思想活動を展開しました。

彼の思想は、当時の仏教界に大きな影響を与え、近代仏教思想史において重要な足跡を残しました。特に、「如来表現の範疇としての三心観」では、『無量寿経』に説かれる法蔵菩薩と、唯識思想の阿頼耶識を同一視し、本願の三心と阿頼耶識の三相が同じものであると主張しました。

経歴

• - 1875年：新潟県に生まれる。
• - 1899年：真宗大学本科を卒業。
• - 1903年：清沢満之が主宰する私塾浩々洞に加入。
• - 1904年：真宗大学研究院を卒業、同大学教授に就任。
• - 1911年：真宗大学の京都移転に反対して辞任。
• - 1916年：雑誌『精神界』の編集責任者として東京へ移住、東洋大学教授に就任。
• - 1924年：東洋大学教授を辞任。
• - 1925年：大谷大学教授に再任。
• - 1930年：『如来表現の範疇としての三心観』が異安心とされ、大谷大学教授を辞任。
• - 1941年：真宗大谷派講師に任ぜられる、大谷大学教授に復職。
• - 1949年：GHQの公職追放により大谷大学教授を辞任。
• - 1951年：大谷大学名誉教授となる。
• - 1961年：大谷大学学長に就任。
• - 1971年：逝去。

主な著書

• - 『救済と自証』
• - 『地上の救主』
• - 『如来表現の範疇としての三心観』
• - 『本願の仏地』
• - 『本願の内観』
• - 『親鸞の仏教史観』
• - 『伝承と己証』
• - 『行信の道』
• - 『内観の法蔵』
• - 『真宗の眼目』
• - 『歎異抄聴記』
• - 『暴風駛雨』
• - 『生産道の宗教』
• - 『分水嶺の本願』
• - 『象徴世界観』
• - 『信に死し願に生きよ』
• - 『法蔵菩薩』
• - 『我如来を信ずるが故に如来在（まし）ます也』

法語

曽我量深は、数多くの法語を残しています。以下はその一部です。

• - 選択本願の念仏とは 念仏申せば助かるということではない 念仏でなければ助からないということだ
• - 自分がわからないから 信ずる信心がぐらつく
• - われわれは知らなくても 仏に願いをかけられ 望みをかけられておる
• - あるものをおそれ、ないものをほしがる、これが悪人の問題
• - 相手を鬼と見る人は 自分もまた鬼である
• - 仏様どこにおいでになりますか 南無阿弥陀仏と念ずる人の前においでになります
• - 浄土は言葉の要らぬ世界である 人間の世界は言葉の必要な世界である 地獄は言葉の通じない世界である
• - 往生の“生”は生まれるというほかに“生きる”という意味がある
• - 人間は生死（しょうじ）の苦しみをのがれようとして、生死に苦しんでいる
• - 如来は我なり されど我は如来に非ず 如来我となりて我を救いたもう
• - 自分は正直なつもりであろうが、実はそんな人間が一番不正直な人間であろう
• - われ如来を信ずが故に如来在しますなり
• - 正しい信念というのものは、劣等感を捨てさせることができる

これらの法語は、曽我量深の深い洞察力と、仏教に対する揺るぎない信念を伝えています。

顕彰

曽我量深の出身地である新潟市南区味方には、同じく名誉村民である脳神経解剖学者の平澤興と並んで、彼を顕彰する「曽我・平澤記念館」が建てられています。この記念館は、彼の業績と精神を後世に伝えるための重要な施設となっています。

参考文献

• - 曽我量深『歎異抄聴記』真宗大谷派宗務所出版部〈真宗文庫〉、1999年

外部リンク

• - 曽我・平澤記念館 新潟市南区

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