曽根威彦

曽根 威彦（たけひこ）

曽根威彦（そねたけひこ、1944年3月6日生まれ）は、日本の法学者であり、専門分野は刑法です。彼は早稲田大学から法学博士の学位を取得しており、学位論文のタイトルは『刑法における正当化の理論』です。現在は早稲田大学名誉教授として、法律教育と研究において多大な業績をあげてきました。

学説の概要

曽根氏の研究は、形式的犯罪論体系と違法性論における結果無価値論を基軸としており、これにより人権論を犯罪論へと有效に反映させることに成功しています。特に、彼は最近の刑事立法の動向に対して批判的であり、法益論など刑法の原則を強調する謙抑的な解釈を志向しています。

犯罪論体系

刑法の構成要件論において、曽根は従来の三分説（構成要件該当性 - 違法性 - 有責性）を批判し、行為性を前に置く四分説を支持しています。これは、内心の処罰を回避するために有用であり、特に共謀罪のような問題の文脈で重要性を持ちます。彼の社会的行為論は、意思によって支配可能な身体の動静のみを刑法上の行為として定義し、行為性に有意性を持たせています。

構成要件論と因果関係

構成要件論では、曽根は行為類型説を採用し、内田文昭や山火正則といった他の学者の考えを踏まえ、主観的な要素もやり取りに含めることを認めています。さらに、因果関係の成立において条件関係と相当因果関係の二つの要件を議論しています。

違法性論

曽根は、結果無価値論を支持しながらも、行為無価値論に対して厳しい批判を展開しており、特に主観的違法要素を否定する立場を取っています。スイスの学者ノルの影響を受け、被害者の同意を含むような新たな理論を提出しています。正当防衛については、自己保全と法確証の利益を織り交ぜて議論し、緊急避難の解釈を独自に展開しています。

責任論と未遂犯論

曽根は法的責任論を重視し、刑事責任と犯罪予防の双方を考慮しています。また、未遂犯に関しては客観説を支持し、故意を違法要素とはしない立場を取っています。共犯論においては共同意思主体説を採用しているものの、従来の共謀共同正犯の理論は否定しています。

学歴と業績

曽根は1962年に栄光学園中学校・高等学校を卒業し、1966年には早稲田大学法学部を卒業しています。その後、1972年に早稲田大学大学院法学研究科を修了し、1974年からは同大学での教職をスタートしました。彼は旧司法試験および新司法試験の考査委員も務めており、法学教育における影響も大きいです。

主要な著作

彼の著作は、刑法学の発展に寄与しており、「刑法総論第4版」や「刑法各論第5版」などの教科書に加え、『刑事違法論の研究』や『刑法における正当化の理論』といった論文も出版されています。これらの作品は、日本における刑法学の重要な資源となっています。

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