最後の審判の三連祭壇画 (グルーニング美術館)

『最後の審判の三連祭壇画』は、初期フランドル派の巨匠ヒエロニムス・ボス（またはその工房）によって1486年から1510年頃に制作された油彩の祭壇画です。この作品は、『新約聖書』に記された最後の審判を主題としており、その複雑で象徴的な描写は、観る者を深い思索へと誘います。

祭壇画は三つのパネルで構成されており、中央パネルには、天球の中に裁判官として座るキリストが描かれています。キリストの両側には、最後の審判のラッパを吹き鳴らす天使と聖人たちが配置され、祝福された魂は天に、呪われた魂は地へと導かれる様子が表現されています。キリストの右手と白い百合の花は天国へ、左手と剣は地獄へと向けられており、その身振りは祝福と呪いを象徴しています。

左翼パネルには、エデンの園が描かれ、祝福された魂がピンクのテントを張った舟に乗って、不老長寿の泉を象徴する塔を目指しています。一方、右翼パネルには地獄が描かれ、罪と愚かさで満ち溢れた生きた世界が、悪魔によって罰せられる様子が描かれています。中央パネルもまた、昆虫のような悪魔たちが、呪われた者を拷問する場面で大部分が占められています。これらの描写は、オランダの諺にインスピレーションを得たとされています。

祭壇画の外側はグリザイユで描かれており、茨の冠を戴冠するキリストが描かれています。この構成は、同時代の他のフランドルの三連祭壇画と共通しています。

この作品の構図は、ウィーン美術アカデミー所蔵の『最後の審判の三連祭壇画』や、プラド美術館所蔵の『快楽の園』と類似しています。これらの作品と同様に、左翼パネルにエデンの園、右翼パネルに地獄が描かれています。しかし、ボスは最後の審判の典型的なモチーフである死者の復活や魂の選別を意図的に省略していると考えられます。

絵画を構成する各要素は、ボスの典型的な様式を示しています。特に、独創的な色彩、鋭く柔軟な筆遣い、象徴性とイメージ豊かなモチーフの組み合わせは、ボスの創造性の重要な例証と言えるでしょう。しかしながら、いくつかの要因が、ボスへの帰属に疑問を呈する声も存在します。いずれにしても、この作品がボスの様式に非常に近く、見る者を魅了する作品であることに変わりはありません。

祭壇画は、元々エミール・グラベに所有され、その後パリの美術商ジャック・セリグマンの手に渡りました。1907年には、美術収集家でありベルギーの元首相でもあったアウグスト・ベルナールトによって購入され、ブルッヘ市に寄贈されました。1936年と1959年に修復作業が行われ、その際、両翼の外側にグリザイユ画が発見されました。また、年輪年代学の分析により、この作品が1486年以前のものではないことが判明しています。

この作品は、2008年のイギリスとアメリカ合衆国の合作映画『ヒットマンズ・レクイエム』にも登場しており、主人公がグルーニング美術館を訪れるシーンで、この祭壇画を見ることができます。

『最後の審判の三連祭壇画』は、その複雑な構成と象徴的な描写によって、観る者に深い印象を与え、ヒエロニムス・ボスの芸術的才能を今に伝える貴重な作品です。

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